DKIMとは?仕組みと設定方法|メール到達率を上げる電子署名マニュアル
DKIM(DomainKeys Identified Mail:ディーキム)という送信ドメイン認証技術の仕組みと、自社のドメインに設定する具体的な手順を解説します。SPFが「送信元の住所確認」であるのに対し、DKIMは「メールの中身が途中で書き換えられていないことの証明(電子署名)」の役割を果たします。現在、Gmail等のセキュリティ要件においてDKIMの設定は事実上の必須となっており、正しく設定することで営業メールやメルマガが迷惑フォルダに振り分けられるリスクを大幅に下げ、到達率を高く保つことができます。
BtoBの営業メールやメルマガを顧客の「受信トレイ」に確実に届けるためには、送信元を証明するセキュリティ設定が不可欠です。
前回の記事で解説したSPFレコードを設定しただけでも、ある程度のなりすましは防げます。しかし、メールがインターネット上のさまざまなサーバーを経由して相手に届く間に、悪意ある第三者によって「内容が書き換えられてしまう(改ざん)」リスクは防げません。
そこで必要になるのが、メールに「電子的なハンコ」を押して安全性を証明する「DKIM(ディーキム)」の設定です。非エンジニアの実務担当者でも理解できるよう、DKIMの仕組みから、配信システムと連携させた具体的なDNS設定の手順までを分かりやすく解説します。
目次
1. DKIM(ディーキム)とは?分かりやすい仕組み
DKIMとは、一言で言えば「メールに特殊な『電子署名』を付与し、送信元が正当であることと、中身が改ざんされていないことを証明する技術」です。
中世のヨーロッパなどで、手紙の封筒にロウを垂らして家紋のスタンプを押す「封蝋(シーリングワックス)」をイメージしてください。もし配達の途中で誰かが手紙を開けたり中身を書き換えたりすれば、ロウが割れて一目で不正がバレます。DKIMは、デジタルの世界でこの封蝋と全く同じ役割を果たします。
「2つの鍵」を使った認証の仕組み
DKIMは「公開鍵暗号方式」という技術を使っており、送信側と受信側で2つの鍵を照合することで認証を行います。
- 秘密鍵(ハンコ): メール配信システム側に持たせておく、署名を作るための鍵です。メールを送信する際、システムが自動的にこの鍵を使って見えない「電子署名(ハンコ)」をメールに押します。
- 公開鍵(印鑑証明書): 自社のDNSサーバー上に公開しておく鍵です。メールを受け取った側(Gmailなど)は、この公開鍵を見に行って「押されているハンコが本物か、途中で中身が書き換えられていないか」を検証します。
2. なぜ「SPF」だけでなく「DKIM」も必要なのか?
「すでにSPFを設定しているから大丈夫」と考えている方は注意が必要です。SPFとDKIMは、それぞれ得意分野が異なるため、両方を設定することが現在のメールマーケティングにおける常識(ベストプラクティス)です。
| SPF(住所確認) | DKIM(電子署名) | |
|---|---|---|
| 証明するもの | 「許可されたサーバー(IP)から送られているか」 | 「中身が途中で書き換えられていないか」 |
| 弱点 | メールが「転送」された場合、送信元のIPが変わるため認証に失敗しやすい。 | 署名自体は強力だが、システム側で鍵を発行する手間がかかる。 |
特に、顧客がメールを別の部署や別のアドレスに「転送」した場合、SPFはエラーになりやすいですが、DKIMの電子署名は転送されても維持されるため、認証が成功しやすくなります。この2つを揃えることで、後の「DMARC(ディーマーク)」設定が可能になり、到達率が劇的に安定します。
3. 【実践】DKIMの設定手順(3ステップ)
DKIMの導入は、「①配信システム側で鍵を作る」→「②DNSサーバーに登録する」→「③確認する」の3ステップで完了します。
STEP1:配信システム側でDKIMキー(公開鍵)を発行する
まずは、あなたが普段利用しているメール配信システムやマーケティングオートメーション(MA)ツールの管理画面にログインします。
- 設定メニューから「送信ドメイン認証」や「DKIM設定」という項目を探します。
- 自社のドメイン(例:example.com)を入力し、「鍵を生成する(発行する)」ボタンを押します。
- 画面上に、DNSに登録するための「ホスト名(セレクタ)」と「値(公開鍵の文字列)」が表示されるので、それをコピーして手元に控えます。
※自社サーバー(レンタルサーバー)を利用している場合は、サーバーのコントロールパネル(例:エックスサーバーやさくらのレンタルサーバ)からDKIM設定を有効化します。
STEP2:自社のDNSサーバーに「TXTレコード」を登録する
次に、自社のドメインを管理しているサービス(お名前.com、AWS Route53など)のDNS設定画面を開き、STEP1で発行された情報を「TXTレコード」として追加します。
・ホスト名(サブドメイン): selector1._domainkey
(※「selector1」の部分は利用するシステムによって異なります。必ずシステムが指定した文字を入力してください。)
・TYPE(種別): TXT
・VALUE(値): v=DKIM1; k=rsa; p=MIGfMA0GCSqGSIb3DQEBAQUAA4GNADCBi...
(※p=の後に続く非常に長い文字列が「公開鍵」です。)
設定を保存したら、インターネット上に情報が浸透するまで数十分〜数時間待ちます。
STEP3:正しく設定できたか確認する(Gmailを利用)
設定が完了したら、正しく電子署名が付与されているかテストを行います。最も簡単で確実なのは、自分のGmailアドレス宛にテスト配信をすることです。
- 配信システムから、自分のGmailアドレス宛にテストメールを送ります。
- Gmailでメールを開き、右上の「︙(三点リーダー)」をクリックして「メッセージのソースを表示」を選択します。
- 表示された画面の上部に「DKIM: ‘PASS’」と緑色で表示されていれば、設定は完璧に成功しています。
✅ 成功している場合の表示例
SPF: PASS
DKIM: PASS(ドメイン: your-company.com)
4. DKIM設定時のよくあるつまずきポイント
実務でDKIMを設定する際、以下のポイントでエラーになることが多いため注意してください。
公開鍵の文字列が長すぎて登録できない(255文字制限)
最近のDKIMはセキュリティを高めるため「2048bit」という長い鍵が推奨されています。しかし、一部の古いDNSサービスでは「TXTレコードは255文字まで」という制限があり、そのまま貼り付けるとエラーになることがあります。
その場合は、文字列を " "(ダブルクォーテーションと半角スペース)を使って2つに分割して登録するなどの対応が必要になります(※ご利用のDNS管理会社のヘルプを参照してください)。
セレクタ(selector)の入力間違い
ホスト名に入力する ._domainkey の前の部分を「セレクタ」と呼びます。これは「配信システムA用の鍵」「配信システムB用の鍵」を見分けるための名前です。配信システム側が指定したセレクタ名と、DNSに登録したセレクタ名が1文字でも違うと認証に失敗するため、コピペミスに気をつけてください。
🛡️ 次のステップ:最後の砦「DMARC(ディーマーク)」の設定へ
SPFとDKIMの設定、お疲れ様でした!
しかし、現在のGmailガイドラインを完全にクリアし、最高水準の到達率を出すためには、
認証に失敗したメールの扱いを決める「DMARC」の設定が不可欠です。
※SPFとDKIMが完了していれば、DMARC設定はTXTレコードを1行追加するだけでとても簡単です。
5. まとめ|DKIMで自社ブランドと到達率を守る
DKIMの要点は以下の通りです。
- DKIMは、メールの中身が改ざんされていないことを証明する「電子署名」である。
- SPF(住所確認)とDKIM(ハンコ)の両方を設定することで、なりすましを強力に防げる。
- 配信システム側で公開鍵を発行し、自社のDNSに「TXTレコード」として登録するだけで完了する。
これらの技術的な設定は、営業メールの開封率や商談獲得率(KPI)を根本から支える重要なインフラ整備です。自社での設定が難しい場合や、到達率の低下にお悩みの場合は、セキュリティ基準を完全に満たした安全な配信環境を提供する「配信代行サービス」の活用もご検討ください。
DKIMに関するよくある質問(FAQ)
Q1.DKIMの設定には費用がかかりますか?
A.DKIMの設定自体(DNSへのレコード追加)に費用はかかりません。ただし、ご利用中のメール配信システムやMAツール側で、DKIMによる独自署名機能を利用するために上位プランの契約が必要になるケースがあります。詳しくはご利用のシステム提供元にご確認ください。
Q2.複数の配信システムを使っている場合、DKIMはどう設定すればいいですか?
A.SPFレコードは「1つのドメインにつき1行のみ」というルールがありましたが、DKIMは配信システムごとに個別の「セレクタ(selector)」を使うため、複数のTXTレコードを並行して登録することが可能です。(例:Aシステム用の `mail1._domainkey` と、Bシステム用の `mail2._domainkey` の2つのレコードをDNSに登録する)。
Q3.DNSに登録しましたが、オンライン確認ツール(MxToolbox等)でエラーが出ます。
A.考えられる主な原因は3つです。①DNSの変更が世界中に反映されるまでのタイムラグ(最大24〜48時間)。②ホスト名(セレクタ._domainkey)のスペルミス。③公開鍵の文字列(p=以降)をコピーする際に、最後の一文字が欠けているなどのミスです。まずは数時間待ってから再度チェックし、それでもダメなら入力内容を見直してください。
この記事の執筆にあたり参照した公的資料・リファレンス
- Google Workspace 管理者ヘルプ:
DKIM を使用してメールのなりすましを防ぐ - 総務省:
送信ドメイン認証技術の導入に関する情報(迷惑メール対策)
Comment