ACジャパンは、多様な社会的課題に対する啓発活動を積極的に推進している公益財団法人です。
その主な活動は、公共広告の制作・放映を通じて、一般市民の意識改革や行動変革を促すことです。

これらの広告は、テレビやラジオ、新聞などのさまざまなメディアで放送され、社会的課題に対する理解と関心を深めることを目指しています。ACジャパンはADVERTISING COUNCIL JAPANの略で、1971年設立の関西公共広告機構から現在のACジャパンと名称を変えたのが2009年です。

外部リンク:ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/AC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3

テレビ放送終了の画面
Pixabay画像:テレビ放送終了の画面

ACジャパンCM差し替えとは

ACジャパン(公益財団法人広告審査機構)は、社会貢献活動として公共広告を制作・放映しています。ACジャパンCM差し替えとは、テレビ・ラジオのCM広告がACジャパンの公共広告に差し替えられることを指します。

2011年3月の東北地方太平洋沖地震発生後の1か月程度、一般広告がACジャパンの広告に差し替えられたのは記憶に新しいところです。
また2022年7月に、参院選の応援演説中の安倍元首相が銃撃された事件直後や、芸能スキャンダル等が発覚した場合、企業都合で商品の販売中止があった場合など、自然災害発生時以外にも、視聴者心理への配慮やCMスポンサーの意向によってACジャパンの広告に差し替えられるケースもあります。

これにより、様々な社会問題やメッセージが広く伝えられ、視聴者の意識改革や行動変革を促す役割を果たしています。

ACジャパンの公共広告

AC公共広告は、公益社団法人ACジャパンが制作する広告をいい、環境問題や公共マナー、薬物問題、いじめ、啓蒙活動といった題材をもとに作成されている、いわばCM素材です。
AC差し替えが決定した場合、即時的に対応できるわけではなく、テレビ局が差し替え可能な素材から対応する形をとるため、翌日以降の放映となるケースがほとんどです。

全国的な放送

ACジャパンの広告CMは全国的に放送され、視聴者の心に深く訴えかける重要なメッセージを伝えます。これらのCMは、多様な社会問題について議論を深めるための優れた媒体であり、視聴者が具体的な行動を起こすきっかけを提供します。

さらに、これらの全国放送CMは、地域の問題だけでなく、全人類が直面する課題についても取り上げています。これにより、視聴者は自身の行動が全国、また全世界にどのような影響を及ぼすかを理解し、自身の行動を見直すきっかけを持つことができます。

CM差し替え事例

  • 「ドライブスマホNO」:ドライブ中のスマホ操作による交通事故防止を訴求
  • 「いじめに立ち向かおう」:学校でのいじめの問題への意識改革を呼びかけ
  • 「エコライフへの移行」エコフレンドリーな生活への移行を訴求
  • 「ジェンダー平等」:ジェンダー平等の推進と女性の社会進出を訴求
  • 「デジタル分断の解消」:デジタルリテラシーの普及とデジタルインフラの整備を訴求
  • 「地球温暖化防止」:地球温暖化への意識を高める
  • 「健康増進」:適度な運動と健康的な食生活の重要性を伝える
  • 「禁煙」:禁煙の意義とその効果を視聴者に呼びかける
  • 「飲酒運転防止」:飲酒運転の危険性を訴え、その防止を訴求する
  • 「子どもの権利」:子どもの権利を保護し、子どもたちが安心して育つ社会の必要性を訴える
  • 「パートナーシップ」:職場での協力と公平性を促進する
  • 「エネルギー節約」:エネルギー使用量の削減と省エネを訴求する
  • 「地元産業支援」:地元の産業と経済を支援することの重要性を訴求する
  • 「海洋保護」:海洋の保全と汚染防止を訴求する
  • 「高齢者支援」:高齢者の尊厳と権利を尊重し、支援を訴求する

ACジャパンとはADVERTISING COUNCIL JAPANの略で関西公共広告機構

CM放映料

本来流されるはずの一般広告CMがACジャパンの広告に差し替えられて放映された場合、CMスポンサーにその費用が返還されるわけではなく、通常通りの費用負担となります。
テレビCMの場合、その放映料は高額になりますが、状況にそぐわないCMを無理やり流すことで、視聴者の反感を買うリスクがある点は意識する必要があります。

CMスポンサーの影響

さきの東北地方太平洋沖地震の際には、1か月余りACジャパンのCMが流れ続けました。
ただこの時、民放では地震発生後の3日間がまったくのCMなしの放送、つまりテレビ局側の特別編成となっていたわけですが、その後は通常通りのCM枠が戻っていました。しかしながら実際は通常通りのCMが流されたわけではなく、「スポンサーの意向」という形でAC差し替えが行われたのです。当然ながらCM放映料も発生することになります。

スポンサーのジレンマ

不可避な自然災害とはいえ、流されるはずだった自社商品のCMがACジャパンの広告に差し替えられたことに不満を抱くスポンサーもあるなど、その料金支払いに対する反応はまちまちでした。

差し替えられた期間分本来の料金を支払うケース、差し替えられた分のみ支払うケース、差し替えられたことを不服として減額交渉を行うケース、CMが流されなかった期間の利益損失を理由に補償を求めるケースなどです。

こうしたことからテレビCMという広告メディアの一つに、未曽有の災害を通して公共メディアとしての側面が浮き彫りになり、非常時におけるCMスポンサーのリスク認識が必要であると認知された事例と言えます。
そしてこのような未曽有の災害発生時には、広告の差し替えと広告料の問題を事前にクリアにしておくべきであり、テレビ局側には柔軟な対応が求められるでしょう。

テレビ視聴者への影響

テレビCMのACジャパン差し替えは、一般視聴者に対して大きな影響を及ぼします。新たに放送される公共広告は、常に新鮮な視点で社会課題を提示し、視聴者の認識を刷新する機会を提供します。
これにより、社会的な問題に対する一般視聴者の認識が深まり、それぞれの課題に対する理解が増すとともに、具体的な行動を起こすきっかけを与えます。

メリットは例えば

「ドライブスマホNO」キャンペーンの新CMは、新たな視覚表現やメッセージを通じてドライブ中のスマホ操作の危険性を強調し、視聴者に安全運転の重要性を再認識させます。また、「エコライフへの移行」キャンペーンの新CMは、再利用、リサイクル、リデュースの具体的な方法を視覚的に示すことで、視聴者が自身の生活習慣を見直すきっかけを提供します。これらの新CMによる一般視聴者への影響は、非常に大きく、社会全体の意識改革を促進する上で重要な役割を果たしています。

デメリット

ACジャパンの広告に差し替えが行われた場合、複数の素材が用意されているものの、その数には限りがあります。テレビを視聴し続けると、同じCMを何度も繰り返し目にするようになり、視聴者が不快に感じたり、気が滅入ったりすることもあるでしょう。実際に震災時には同じCMばかりで見飽きた、ふさわしくないCM流れているなどのクレームがテレビ局に寄せられていたように、差し替えがもたらす心理的影響も免れません。

最後に

AC差し替えは、CMを放映するテレビ局が、不特定多数の人々が目にする公共メディアとしての側面を持つため、災害やCM出演者のスキャンダル、スポンサー企業の都合などにより発生する可能性があります。その点を広告主があらかじめ留意して、出稿すべきであると言えるでしょう。

(この記事は2014年に掲載した記事を2023年に加筆修正更新したものです)