テレビCMのAC差し替えとは、テレビ・ラジオ広告がACジャパンの公共広告に差し替えられることを指します。
2011年3月の東北地方太平洋沖地震発生後の1か月程度、一般広告がACジャパンの広告に差し替えられたのは記憶に新しいところです。
また2022年7月に、参院選の応援演説中の安倍元首相が銃撃された事件直後や、芸能スキャンダル等が発覚した場合、企業都合で商品の販売中止があった場合など、自然災害発生時以外にも、視聴者心理への配慮やCMスポンサーの意向によってACジャパンの広告に差し替えられるケースもあります。
ACジャパンの広告
ACジャパンの広告とは、公益社団法人ACジャパンが制作する広告をいい、環境問題や公共マナー、薬物問題、いじめ、啓蒙活動といった題材をもとに作成されている、いわばCM素材です。
AC差し替えが決定した場合、即時的に対応できるわけではなく、テレビ局が差し替え可能な素材から対応する形をとるため、翌日以降の放映となるケースがほとんどです。
差し替え時のCM放映料
本来流されるはずの一般広告CMがACジャパンの広告に差し替えられて放映された場合、CMスポンサーにその費用が返還されるわけではなく、通常通りの費用負担となります。
テレビCMの場合、その放映料は高額になりますが、状況にそぐわないCMを無理やり流すことで、視聴者の反感を買うリスクがある点は意識する必要があります。
テレビCMのAC差し替えがCMスポンサーへたらす影響
さきの東北地方太平洋沖地震の際には、1か月余りACジャパンのCMが流れ続けました。
ただこの時、民放では地震発生後の3日間がまったくのCMなしの放送、つまりテレビ局側の特別編成となっていたわけですが、その後は通常通りのCM枠が戻っていました。しかしながら実際は通常通りのCMが流されたわけではなく、「スポンサーの意向」という形でAC差し替えが行われたのです。当然ながらCM放映料も発生することになります。
CMスポンサーが抱えるジレンマ
不可避な自然災害とはいえ、流されるはずだった自社商品のCMがACジャパンの広告に差し替えられたことに不満を抱くスポンサーもあるなど、その料金支払いに対する反応はまちまちでした。
差し替えられた期間分本来の料金を支払うケース、差し替えられた分のみ支払うケース、差し替えられたことを不服として減額交渉を行うケース、CMが流されなかった期間の利益損失を理由に補償を求めるケースなどです。
こうしたことからテレビCMという広告メディアの一つに、未曽有の災害を通して公共メディアとしての側面が浮き彫りになり、非常時におけるCMスポンサーのリスク認識が必要であると認知された事例と言えます。
そしてこのような未曽有の災害発生時には、広告の差し替えと広告料の問題を事前にクリアにしておくべきであり、テレビ局側には柔軟な対応が求められるでしょう。
テレビCMのAC差し替えが一般視聴者へたらす影響
ACジャパンの広告に差し替えが行われた場合、複数の素材が用意されているものの、その数には限りがあります。
テレビを視聴し続けると、同じCMを何度も繰り返し目にするようになり、視聴者が不快に感じたり、気が滅入ったりすることもあるでしょう。実際に震災時には同じCMばかりで見飽きた、ふさわしくないCM流れているなどのクレームがテレビ局に寄せられていたように、差し替えがもたらす心理的影響も免れません。
まとめ
AC差し替えは、CMを放映するテレビ局が、不特定多数の人々が目にする公共メディアとしての側面を持つため、災害やCM出演者のスキャンダル、スポンサー企業の都合などにより発生する可能性があります。その点を広告主があらかじめ留意して、出稿すべきであると言えるでしょう。
(この記事は2014年に掲載した記事を2019年と2022年に加筆修正更新したものです)