値入率と粗利率の違いとは?BtoB営業が見積もりで損をしないための計算式

「今回の案件、原価が高いから利益(粗利)30%は確保して見積もり出して」
上司からそう指示された時、あなたは電卓でどのような計算をしますか?
もし、「原価 × 1.3」で計算してしまったなら、その見積もりは赤字予備軍です。
営業現場で頻繁に使われる「値入率(ねいれりつ)」と「粗利率(あらりりつ)」。この2つは似て非なるものであり、混同すると会社の利益を大きく損なうことになります。
この記事では、BtoB営業マンが絶対に間違えてはいけない「正しい売価設定の計算式」を解説します。
値入率(マークアップ)と粗利率(マージン)の決定的な違い
まずは言葉の定義をはっきりさせましょう。どちらも「利益」を表す指標ですが、「何を基準(分母)にしているか」が全く違います。
値入率(Markup:マークアップ)
「原価(仕入れ値)」に対して、どれだけ利益を乗せたかを表す数値。
- 計算式: 利益額 ÷ 原価 × 100
- 視点: 仕入れ担当者、小売店(商品を仕入れて売値を決める時)
粗利率(Margin:マージン)
「売上(売価)」に対して、どれだけ利益が残ったかを表す数値。
- 計算式: 利益額 ÷ 売価 × 100
- 視点: 経営者、営業マネージャー(会社の業績を見る時)
なぜ混同してはいけないのか
多くの会社では、営業目標や予算管理は「粗利率(マージン)」で設定されています。
しかし、現場の営業マンが計算しやすい「値入率(マークアップ)」で見積もりを作ってしまうと、目標とする利益率に届かないという事態が発生します。
【危険】やってはいけない「掛け算」の見積もり
具体的な数字で見てみましょう。ここが一番の落とし穴です。
【例題】
原価70万円のシステム開発案件。
会社から「粗利率30%」を確保するよう指示されました。いくらで見積もりを出しますか?
❌ 間違い(掛け算)
「30%乗せればいいんだな」と考えて、単純に掛け算をしてしまうパターン。
70万円 × 1.3 = 91万円(売価)
これだと利益額は、91万円 - 70万円 = 21万円 です。
この時の「粗利率」を計算してみましょう。
21万円(利益) ÷ 91万円(売価) = 約23%
目標の30%には全く届いていません。
これでは、上司から「なんでこんなに利益が低いんだ!」と叱責されることになります。
◎ 正解(割り戻し計算)
粗利率(売上に対する利益の割合)を30%にするには、「割り戻し計算」が必要です。
70万円 ÷ (1 - 0.3) = 100万円(売価)
これなら利益額は、100万円 - 70万円 = 30万円。
粗利率を確認すると、30万円 ÷ 100万円 = 30%。
見事に目標達成です。
このように、同じ「30%」という言葉でも、計算方法を間違えるだけで利益額に9万円もの差(21万円 vs 30万円)が出てしまうのです。

会社が求めているのは右側の「粗利率」です。電卓を叩くときは、必ず「割り戻し計算(÷ 0.7)」を使いましょう。
すぐに使える!正しい売価設定の計算式
BtoB営業の実務で、電卓を叩くときに使うべき公式をまとめました。
迷ったときはこれを見てください。
「粗利率(マージン)」から売価を決める場合
会社から「粗利〇%とれ!」と言われたらこれを使います。BtoB営業の9割はこちらです。
※目標粗利率が30%なら「0.3」、25%なら「0.25」を入れます。
電卓操作:原価 ÷ 0.7 = (30%確保の場合)
「値入率(マークアップ)」から売価を決める場合
「原価に一律2割乗せて売る」といった単純なルールの場合はこちらを使います。
BtoB営業が「値入」を意識すべき場面
基本は「粗利率(割り戻し)」での計算を推奨しますが、戦略的に「値入」の考え方を使う場面もあります。
値引き交渉の限界ラインを知る
顧客から「あと5%値引きして」と言われた時、安易に応じると粗利率はガクンと下がります。
自分の持っている原価に対して、いくらまでなら売価を下げても赤字にならないか(損益分岐点)を即座に計算する能力は、タフな交渉の現場で必須です。
相見積もりでの戦略的プライシング
競合他社がひしめくコンペでは、あえて目標粗利率を無視し、「値入率10%(ほぼ原価)」で提示してでも契約を取りに行く戦略(ペネトレーション価格)が必要なこともあります。
重要なのは、「計算ミスで利益が出なかった」のと、「戦略的に利益を削った」のとでは、意味が全く違うということです。
まとめ:数字に強い営業マンは信頼される
「どんぶり勘定」で適当な見積もりを作る営業マンは、経営者や経理部門から信頼されません。
逆に、原価と利益の関係(値入と粗利の違い)を正しく理解し、根拠のある数字を出せる営業マンは、社内での評価も高まります。
会社のため、そして自分の成績のために、今日から電卓の使い方(割り戻し計算)をマスターしましょう。
薄利多売の泥沼から抜け出しませんか?
ギリギリの利益率で相見積もりに疲弊するよりも、貴社の価値を高く評価してくれる新規顧客を開拓する方が、利益確保への近道です。
業種・地域・規模を指定して、利益率の高いターゲット企業のリストを作成しましょう。
💡 あわせて読みたい営業計数の知識
値入率に関するよくある質問
- Q. 「原価率」と「値入率」を足すと100%になりますか?
- A. いいえ、なりません。「原価率」と足して100%になるのは「粗利率(マージン)」です。(例:原価率70% + 粗利率30% = 売価100%)。値入率は仕入れ原価に対する上乗せ分なので、足しても100%にはなりません。
- Q. 小売業以外でも「値入率」という言葉は使いますか?
- A. 商慣習によりますが、メーカーやIT業界などのBtoB営業では「粗利率(マージン)」を使うことが一般的です。ただし、現場レベルでは言葉が混同されていることも多いため、「分母は原価ですか?売価ですか?」と確認するのが安全です。
参考・出典
- 中小企業庁「価格設定の基礎知識(J-Net21)」
- 日本商工会議所「簿記検定試験(商業簿記・原価計算)」
- その他、一般的な管理会計・財務会計の基準を参照
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