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損益分岐点とは?「いくらまで値引きできる?」に即答し、赤字受注を防ぐための営業計算

  
損益分岐点という崖っぷちで、安易な値引き(左)と適正価格の維持(右)のバランスを取ろうと苦闘する営業マンを描いたアイキャッチ画像。値引き側に天秤が傾き、赤字の危機が迫っている様子。
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損益分岐点とは?「いくらまで値引きできる?」に即答し、赤字受注を防ぐため...
▼ この記事の対象:顧客からの「あとちょっと安くして」という要望に安易に応じている、「1割の値引きを取り戻すのに、何割多く売ればいいか」を即答できないBtoB営業担当者

損益分岐点という崖っぷちで、安易な値引き(左)と適正価格の維持(右)のバランスを取ろうと苦闘する営業マンを描いたアイキャッチ画像。値引き側に天秤が傾き、赤字の危機が迫っている様子。

「競合が安い価格を出してきたので、ウチも10%値引きして対抗しましょう!」
「今回は実績作りなので、トントン(利益ゼロ)でも受注したいです!」

営業会議でこのような発言をしていませんか?
その「10%の値引き」や「トントン」という判断、本当に計算できていますか?

実は、利益率によっては「たった10%の値引きを取り戻すために、販売数を1.5倍(50%増)にしなければならない」という恐ろしい現実があります。
この記事では、営業マンが自分の首を絞めないために知っておくべき「損益分岐点」「値引きの代償」について解説します。

損益分岐点(BEP)とは?営業マン視点の定義

損益分岐点(Break-even Point)とは、文字通り「損(赤字)」と「益(黒字)」が分岐するポイントのことです。
売上高と総費用が等しくなり、利益がちょうどゼロになる地点を指します。

覚えておくべき2つのコスト

この計算をするために、営業マンは費用を2種類に分けて考える必要があります。

  1. 固定費(Fixed Cost):
    売上がゼロでも毎月掛かるお金。(家賃、水道光熱費、あなたの基本給など)
  2. 変動費(Variable Cost):
    売上に応じて増減するお金。(商品の仕入れ原価、外注費、販売手数料、運送費など)

そして、営業にとって最も重要なキーワードが「限界利益(Marginal Profit)」です。

限界利益 = 売上 - 変動費

会社は、この「限界利益」を積み上げて、そこから「固定費」を支払っています。
つまり、限界利益が固定費を上回った瞬間から、初めて会社に「純粋な利益」が残るのです。

【衝撃】「10%の値引き」を取り戻すには、どれだけ売ればいい?

ここからが本題です。多くの営業マンが陥る「勘違い」を正しましょう。

誤解:「10%値引いたんだから、販売数を10%増やせばチャラ(元通り)だろう」
真実: いいえ、全く足りません。ケースによっては50%増(1.5倍)売る必要があります。

恐怖のシミュレーション

ある商品を例に計算してみましょう。

  • 定価: 100円
  • 変動費(原価): 70円
  • 利益(限界利益): 30円(利益率30%)

この商品を100個売った時の利益総額は、30円 × 100個 = 3,000円 です。
では、「10%値引き(売価90円)」にして、同じ3,000円の利益を確保するには、何個売ればいいでしょうか?

値引き後の計算:

売価は90円になりますが、変動費(原価)は70円のまま変わりません。
すると、1個あたりの利益は…
90円 - 70円 = 20円 に激減します。

目標の3,000円を稼ぐために必要な販売数は…
3,000円 ÷ 20円 = 150個

結論:50個(+50%)も多く売らないといけない!

いかがでしょうか。「価格を1割下げる」ということは、「利益の源泉(限界利益)を3割削る」ことと同義だったのです。
「10%安くするから買って!」と言うのは簡単ですが、その代わりに「今までの1.5倍の労力で売り歩く」覚悟があなたにありますか?

利益率30%の商品を10%値引きした場合のシミュレーション図解。定価販売なら100個で達成できる目標利益が、値引き後は1個あたりの利益が減るため、1.5倍の150個販売しなければ達成できないことを示している。

見てください。1個あたりの利益が「30円→20円」に減るため、同じ利益を稼ぐには販売数を「100個→150個」に増やさなければなりません。これが値引きの恐怖です。

損益分岐点を知れば「撤退ライン」が見える

損益分岐点の感覚を持つと、無理な受注を回避する「勇気ある撤退」ができるようになります。

赤字受注(原価割れ)の防衛線

顧客から「予算がこれしかない」と強烈な指値(さしね)をされた時、以下のラインを意識してください。

  1. 利益確保ライン: 会社が目標とする利益が出る価格。
  2. 損益分岐点ライン(トントン): 固定費も回収できるギリギリの価格。
  3. 【絶対防衛線】変動費ライン: 原価(仕入れ・外注費)と同等の価格。

もし、顧客の提示額が「3」を下回るなら、受注すればするほど会社から現金が流出し、赤字が増えます。
「その金額ですと、外注費などの実費すら賄えませんので、受注することは会社への背信行為になります。お受けできません」
と、毅然と断る(または仕様を削る提案をする)のがプロの営業です。

損益分岐点を下げる(利益体質にする)方法

会社を楽にする(少ない売上でも利益が出るようにする)には、損益分岐点を下げるしかありません。営業ができることは3つです。

  1. 単価を上げる(最も効果大):
    安易な値引きをやめる。付加価値を伝えて高く売る。スキミング戦略などを活用する。
  2. 変動費を下げる:
    仕入れ先と交渉して原価を下げる。または、外注せずに内製化してコストを抑える。
  3. 固定費を下げる:
    無駄な経費を使わない。効率的に動いて「時間コスト」を下げる。

まとめ:値引きは「麻薬」である

「値引き」は、一時的に売上を作る特効薬のように見えますが、使いすぎると会社の利益構造をボロボロにする「麻薬」です。

「10%値引くなら、販売数を1.5倍にする覚悟があるか?」
次回、値引きの誘惑に駆られた時は、この問いを自分自身に投げかけてみてください。
損益分岐点の感覚を持てば、あなたの「1円へのこだわり」は劇的に変わるはずです。

「値引き」ばかり言う顧客に疲れていませんか?

損益分岐点を計算すると、無理な値引き要求に応じることがいかに危険か分かります。
利益を削って仕事をするよりも、貴社の適正価格を受け入れてくれる「優良顧客」を開拓しましょう。

損益分岐点に関するよくある質問

Q. 損益分岐点比率とは何ですか?
A. 実際の売上高に対して、損益分岐点がどのくらいの位置にあるかを示す指標です。(計算式:損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100)。この数値が低いほど(例えば80%以下)、売上が多少落ちても赤字になりにくい「安全な会社」と言えます。
Q. 営業マンの人件費は固定費ですか?変動費ですか?
A. 基本給や固定手当は「固定費」です。一方で、売上に応じて支払われる歩合給(インセンティブ)や販売手数料は「変動費」として扱われます。

参考・出典

  • 中小企業庁「財務分析の基礎(損益分岐点分析)」
  • 日本商工会議所「日商簿記検定(工業簿記・原価計算)」
  • グロービス経営大学院「損益分岐点(BEP)とは」

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