BtoB企業のテレビCM戦略|効果が出る費用感と「指名検索」を増やす仕組み
「テレビCMなんて、大手のBtoCメーカーがやるものでしょ?」
「ウチのようなニッチなBtoB商材には関係ない」
かつてはそう思われていましたが、今やその常識は完全に覆されました。
Sansan、ラクス、MoneyForwardなど、急成長しているBtoB企業の多くが、成長の起爆剤として「テレビCM」を活用しています。
なぜ、ターゲットが限られるBtoBで、不特定多数に届くテレビCMが有効なのか。
本記事では、BtoBマーケティングにおけるテレビCMの役割、具体的な種類、そして失敗しないための費用感について解説します。
この記事は「オフライン広告戦略」の詳細解説ページです。
なぜ今、SaaS・BtoB企業が「テレビCM」を打つのか?
デジタルマーケティングが高度化した現在において、あえてアナログなテレビCMに投資する理由は、主に3つあります。
Web広告の「限界(CPA高騰)」を突破するため
リスティング広告やSNS広告は「顕在層(すでに悩みを持っている人)」を刈り取るのには最適ですが、そのパイには限りがあります。
Web広告をやり尽くしてCPA(獲得単価)が高騰した時、「まだ悩みすら自覚していない潜在層」にアプローチできる唯一無二の手段がテレビCMです。
圧倒的な「信頼(社会的証明)」の獲得
「テレビでCMが流れている」という事実は、特に日本のビジネス社会において絶大な信頼の証になります。
決裁者に対して安心感を与えるだけでなく、「採用活動において求職者が増える」「社員のモチベーションが上がる」といった副次的効果も非常に大きいです。
「指名検索」のベースアップ
テレビCMを見た人は、その場ですぐに購入しなくても、後で気になった時に「サービス名」で検索します。
この「指名検索(ブランド名での検索)」は、リスティング広告に比べてCVR(成約率)が圧倒的に高く、中長期的なリード獲得コストを押し下げます。

▲ 「指名検索」が増えることで、Web広告のCPAも改善される
テレビCMの種類(タイム・スポット・運用型)
一口にテレビCMと言っても、買い方によって大きく3つに分類されます。
BtoB企業がいきなり全国放送をする必要はありません。
タイムCM(番組提供)
「この番組の提供は〜」と紹介されるタイプです。「WBS(ワールドビジネスサテライト)」や「ガイアの夜明け」など、ビジネスパーソンが見る番組を指定して、長期間(2クール=6ヶ月など)放送します。
ブランディング効果は最強ですが、枠が空いていないことが多く、費用も高額です。
スポットCM(時間指定なし)
番組を指定せず、「時間帯(例:朝の通勤前、夜の帰宅後)」だけを指定してランダムに流す方法です。
1週間などの短期から実施でき、融通が利きます。キャンペーン告知などに適しています。
SAS(スマート・アド・セールス)/運用型CM
近年主流になっている買い方です。
「1本単位」から枠を購入できたり、これまでは難しかった「視聴データの分析」ができたりと、Web広告に近い感覚でPDCAを回せるのが特徴です。
地方局に絞ってテストマーケティングを行い、成果が出たらエリアを広げる「スモールスタート」が可能です。
気になる費用相場とスケジュールの目安
「数千万円かかる」と思われがちですが、エリアを絞れば意外と安価に始められます。
費用は大きく「放映費(メディア費)」と「制作費」に分かれます。
放映費:地方局なら数十万円〜
放映費は、視聴可能人口(GRP)によって決まります。
- 📺 キー局(関東): 最低でも数百万円〜数千万円(ハードル高)
- 📺 地方局(福岡・静岡など): 30万円〜100万円程度でテスト可能
- 📺 CS/BS放送: 視聴者は限定されるが、ターゲットが合えば安価で効率的
制作費:アニメーションなら安く抑えられる
有名タレントを起用した実写CMは、撮影費やギャランティで1,000万円以上かかることもザラです。
一方、BtoBで最近増えている「モーショングラフィックス(アニメーション)」や「社員が出演するインタビュー形式」であれば、100万円〜300万円程度に抑えることも可能です。
準備期間:最低3〜4ヶ月
Web広告のように「明日から配信」とはいきません。
- 1ヶ月目: 企画・コンテ作成
- 2ヶ月目: 撮影・編集・ナレーション収録
- 3ヶ月目: 「業態考査」と「表現考査」(テレビ局の厳しい審査)
- 4ヶ月目: 放映開始
特にBtoBの場合、「何をしている会社か分からない」と審査に落ちることがあります。Webサイトの会社概要や事業内容をしっかり整備しておく必要があります。
BtoBテレビCM「成功の鉄則」と効果測定
「お金をかけてCMを流したのに、問い合わせが増えない…」
そんな失敗を防ぐために、BtoBならではの鉄則を押さえておきましょう。
機能を説明するな、「課題」に共感させろ
15秒や30秒という短い時間で、複雑なSaaSの機能を理解させるのは不可能です。
「請求書業務が面倒くさい…」「営業リストが枯渇した…」といった、ターゲットが抱える「あるあるな悩み(インサイト)」を提示し、「それ、解決できます」と一言添えるだけで十分です。
検索窓を目立たせる(続きはWebで)
テレビCMのゴールは「購入」ではなく、「検索させること」です。
CMのラスト3秒には、必ず「検索窓」のビジュアルと、検索してほしいキーワードを大きく表示しましょう。「(サービス名)で検索!」というナレーションも必須です。
効果測定は「指名検索数」のリフト値で見る
CMの効果は「問い合わせ数」だけでなく、以下の指標で複合的に判断します。
- ✅ 指名検索数: ブランド名での検索がどれだけ増えたか(最重要)
- ✅ サイトセッション数: Webサイトへの訪問者がどれだけ増えたか
- ✅ CPAの改善: 指名検索が増えることで、Web広告全体の獲得単価が下がっているか
【用語集】広告担当者が知っておくべきテレビCM用語
テレビCMの実施にあたって、広告代理店との打ち合わせや効果測定で頻出する専門用語を詳しく解説します。
視聴率・視聴行動(ザッピング・HUT 他)
- ザッピング(Zapping)
- テレビ視聴者がCM放送中や番組の合間に、リモコンでチャンネルを頻繁に切り替える行為のこと。興味のないCMを回避するために行われることが多く、広告主にとっては視聴機会の損失となります。これを防ぐために、CM冒頭の数秒で視聴者の注意を惹きつけるクリエイティブ工夫(アテンション)が求められます。
- HUT(総世帯視聴率)
- Households Using Televisionの略。調査対象となる全世帯のうち、その時間に「テレビをつけている世帯」がどれくらいあるかを示す割合です。この数値が高い時間帯ほど、テレビの前にいる視聴者の母数が多いため、CMを出稿した際の到達人数(リーチ)も期待できます。
- アンタイム(Untime)
- CMなどの放送素材において、映像や音声が含まれていない「無音・無映像」の状態のこと。放送事故を防ぐための調整時間として意図的に設けられる場合もありますが、本編中に発生すると放送事故扱いになることもあります。広告実務ではあまり使いませんが、放送技術用語として知られています。
契約・放送進行(AC差し替え・作案 他)
- テレビのACジャパンCM差し替え
- 予定されていた企業CMが放送されず、代わりに公益社団法人ACジャパンの公共広告が放送されること。企業側の不祥事による自粛、大規模災害時の配慮、またはCM素材の納品が放送基準に間に合わなかった場合などに発生します。放送枠自体は購入済みのため、放送事故(空白)にならないよう穴埋めとして利用されます。
- 作案(さくあん)
- スポットCMにおいて、広告代理店が作成する「どの番組の、どのタイミング(何日の何時ごろ)にCMを流すか」という具体的な放送スケジュール案のこと。「線引き」とも呼ばれます。クライアントはこの作案を確認し、ターゲットの生活リズムに合っているかをチェックして承認します。
- Aタイム(A帯)
- テレビ局が定める放送時間帯のランク区分の一つ。視聴率が高く人気のある時間帯(ゴールデンタイムなど)を「特A」や「Aタイム」と呼び、逆に深夜や早朝などの視聴者が少ない時間帯は「Cタイム」などと呼ばれます。当然、Aタイムの枠取りは競争率が高く、料金(パーコスト)も高額になります。
- 広告枠買い切り
- 特定の番組枠や時間枠を、単発(あるいは期間限定)で指定して購入する契約形態。通常の「タイム提供(半年契約など)」とは異なり、イベント告知や新製品発売のタイミングだけ集中的に露出したい場合に利用されます。融通は利きますが、枠が空いていないと実施できません。
制作・素材管理(10桁コード・PPM 他)
- 10桁CMコード・共通コード管理センター
- テレビCM素材の一つ一つに割り振られる、10桁の英数字からなる識別番号のこと。「広告共通管理コード」とも呼ばれます。どの企業のどの素材かを厳格に管理し、放送局での「素材の取り間違い」や「放送ミス」を防ぐために運用されています。
- PPM(Pre Production Meeting)
- CM撮影の直前に行われる「最終確認会議」のこと。プリ・プロダクション・ミーティングの略。広告主、代理店、制作会社(監督・カメラマン・照明等)が一堂に会し、演出コンテ、衣装、小道具、ロケ地などの詳細を最終決定します。ここでの決定事項に基づいて撮影が進行するため、非常に重要な会議です。
- CMバンク・在版(ざいはん)
- テレビ局内に設置された、放送用CM素材を保管・送出するシステムを「CMバンク」と呼びます。また、以前に納品してバンクに保管されている(在る)素材を再利用して放送することを「在版(ざいはん)利用」と言います。同じ素材を使い回す場合、在版指示を出すことで再納品の手間とコストを省けます。
まとめ:運用型テレビCMの時代へ
テレビCMはもはや「一発勝負のギャンブル」ではありません。
地方局での小規模テストから始め、クリエイティブをABテストし、数字を見ながらエリアを拡大していく「運用型広告」の一つです。
「認知」という壁を突破し、業界のトップランナーを目指すのであれば、テレビCMは最強の武器になります。
しかし、数百万単位の投資には慎重な判断も必要です。まずはスモールスタートで、別の手段から「認知拡大」をテストしてみるのも一つの手です。
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BtoBテレビCMに関するよくある質問
Q. テレビCMは最低いくらから実施できますか?
地方局(ローカル局)でのスポットCMであれば、放映費30万円〜50万円程度から実施可能です。これに別途、CM制作費(100万円〜)が必要になります。
Q. CMの効果はどうやって測定するのですか?
主に「指名検索数(ブランド名での検索数)」の上昇率や、Webサイトへのセッション数(アクセス数)の増加を見て判断します。放映エリアと非放映エリアを比較することで、より正確な効果を測定できます。
Q. 審査(考査)は厳しいですか?
はい、Web広告より厳格です。特に「業界最安値」や「No.1」といった表現には客観的な根拠資料が求められます。また、企業の信頼性(登記簿や決算書など)も審査対象となります。
本記事の監修・参考情報について
本記事は、一般的なマーケティング理論に加え、以下のテレビCM効果測定サービスや調査機関が公開している実測データ・メソッドを参考に作成しています。
-
・ノバセル(ラクスル株式会社)
(運用型テレビCMの市場シェアNo.1。BtoB/SaaS企業のCM成功事例や、指名検索による効果測定ロジックを参照) -
・株式会社スイッチメディア(SWITCH MEDIA)
(国内最大級のテレビ視聴パネルデータ。世帯視聴率ではなく「誰が(経営層などが)見ているか」という個人視聴データを参照) -
・株式会社ビデオリサーチ
(日本国内におけるテレビ視聴率調査の公式機関。GRP(延べ視聴率)や放送エリアに関する基礎データを参照) -
・TVer(ティーバー)媒体資料
(民放公式テレビポータル。コネクテッドTV(CTV)の普及率や、ビジネス層の利用動向に関するデータを参照)
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