ニューロマーケティングとは?BtoB営業で顧客の「脳(本能)」に直接訴求する技術

「お客様へのアンケート結果をもとに商品を改良したのに、売上が伸びない」
「『機能は素晴らしい』と褒められたのに、なぜか契約に至らない」
BtoBの現場でよくあるこの現象。原因は、顧客が嘘をついているからではありません。
顧客自身も「自分の本当の欲求(本音)」を言語化できていないことが原因です。
このような「言葉にできない無意識の反応」を科学的に分析し、マーケティングに応用する手法が「ニューロマーケティング(脳科学マーケティング)」です。
この記事では、最新の脳科学の知見を、今日からの営業資料やDM作成にどう活かすか、実践的なテクニックを解説します。
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ニューロマーケティングとは?「言葉」ではなく「脳」を見る
ニューロマーケティングとは、脳科学(Neuroscience)とマーケティングを組み合わせた造語です。
従来の「アンケート」や「インタビュー」といった手法では、どうしても「建前」や「理性的な回答」が含まれてしまいます。
そこで、脳波測定やアイトラッキング(視線計測)などの技術を使い、「脳がどう反応したか(快・不快/注目・無視)」という生体反応を直接データ化することで、消費者の深層心理を解明しようとするアプローチです。
顧客は「嘘」をつく(無意識に)
例えば、ある食品メーカーの調査で「健康に良いお菓子と、美味しいお菓子、どちらを買いますか?」と聞けば、多くの人は理性的(建前)に「健康に良い方」と答えます。
しかし、実際の売り場では、糖分たっぷりの「美味しいお菓子」が無意識(本能)に選ばれてしまうことがあります。
BtoBでも同様です。
口では「コストパフォーマンス重視」と言いながら、実際には「担当者の顔が好みだった」「パンフレットのデザインが立派で安心した」という直感的な理由で契約が決まることは珍しくありません。
BtoB営業ですぐ使える!脳科学テクニック3選
脳波測定器などの高価な機材がなくても、脳科学の原則を知っていれば、営業活動の精度を劇的に高めることができます。特にBtoBで有効な3つの法則を紹介します。

「文字を減らす」「損失を伝える」「最初の印象を磨く」。この3つを意識するだけで、顧客の脳の反応は劇的に変わります。
視覚優位性(画像は文字の6万倍速い)
人間の脳は、文字情報の処理には多くのエネルギーを使いますが、画像情報の処理は得意です。
一説には、画像は文字の60,000倍の速さで処理されると言われています。
【営業への応用】
忙しい決裁者に読ませる資料を作ってはいけません。
「文字だらけの企画書」は、脳にとって「苦痛」であり、読むのを後回しにされます。
図解、グラフ、アイコンを多用し、「パッと見ただけで内容が入ってくる(脳の負荷が低い)」資料を作成しましょう。
損失回避の法則(プロスペクト理論)
人間の脳は本能的に、「得すること(利得)」よりも「損すること(損失)」に対して約2倍強く反応する性質があります。
【営業への応用】
「導入すればコスト削減になります」というポジティブ訴求だけでなく、「今のままだと、年間これだけの無駄なコストを払い続けることになります(損失)」というネガティブ訴求を組み合わせることで、脳の「行動スイッチ」を入れることができます。
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初頭効果(第一印象が全て)
脳は、最初に提示された情報を最も強く記憶し、その後の評価基準にします(初頭効果)。
最初の印象が「信頼できそう」であれば、多少のミスも好意的に解釈されますが、逆もまた然りです。
【営業への応用】
DMなら「キャッチコピー」、商談なら「最初の挨拶と身だしなみ」、Webサイトなら「ファーストビュー」に全力を注いでください。
ここで「自分には関係ない」「安っぽい」と脳に判断されると、その後の説明は一切頭に入らなくなります。
ニューロマーケティングを応用したDM・資料作成術
具体的に、DM(ダイレクトメール)や営業資料のデザインにはどう応用できるでしょうか。
アイトラッキング(視線計測)の知見を活かす
人の視線は、均等には動きません。以下のようなパターンで動くことが分かっています。
- F型パターン(Webサイト等): 左上から読み始め、右へ、そして下へ。
- Z型パターン(紙媒体等): 左上 ➡ 右上 ➡ 左下 ➡ 右下。
この法則に従い、最も伝えたい「メリット」や「オファー(特典)」を、視線のゴール地点(右下など)や通過点に配置することで、見落としを防ぎます。
脳に訴えかける「配色」の心理効果
色も脳に直接的なメッセージを送ります。
- 青(ブルー): 知性、信頼、冷静。BtoB企業のコーポレートカラーとして最も無難で効果的です。
- 赤(レッド): 興奮、緊急、注意。「期間限定」「今すぐお電話を」などの行動喚起(CTA)に使います。
- オレンジ: 親近感、低価格、エネルギー。安さや親しみやすさをアピールする場合に有効です。
まとめ:論理の裏にある「感情(脳)」を動かせ
BtoB営業は「論理(ロジック)」で決まると言われます。
確かに社内稟議を通すためのロジックは必要ですが、最初に「この会社の話を聞いてみよう」と判断するのは、担当者の「脳(直感・感情)」です。
- 文字より画像で脳の負担を減らす
- 損失を強調して本能を刺激する
- 視線の動きに合わせて情報を置く
これらを意識するだけで、あなたの営業資料やDMは、「無視される紙」から「つい読んでしまう提案書」へと生まれ変わります。
脳に響くアプローチを「決裁者」に直接届けませんか?
どれだけ脳科学に基づいた素晴らしいクリエイティブを作っても、相手の手元に届かなければ意味がありません。
Web広告では届きにくい決裁者のデスクへ、FAXDMや郵送DMで物理的にアプローチしましょう。
ニューロマーケティングに関するよくある質問
- Q. ニューロマーケティングは心理操作(マインドコントロール)ではないのですか?
- A. いいえ、顧客を騙して買わせる技術ではありません。顧客自身も気づいていない「潜在的なニーズ」や「不快感」を発見し、より適切な提案を行うための科学的なアプローチです。
- Q. 中小企業でも導入できますか?
- A. 脳波測定などの専用機材を導入するのはハードルが高いですが、この記事で紹介したような「行動経済学に基づいたデザインの工夫」や「配色の最適化」などは、コストをかけずに今日から実践可能です。
参考・出典・推薦図書
- 『脳科学マーケティング100の心理技術』 ロジャー・ドゥーリー (著)
- 『予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』 ダン アリエリー (著)
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