リスト不要の「配達地域指定郵便(タウンメール)」とは?ポスティングとの違いと料金・活用法
「特定エリアの新規客を開拓したいが、顧客リストがない」そんな悩みを解決するのが、郵便局のサービス「配達地域指定郵便物(タウンメール)」です。宛名なしで、指定した地域の全戸・全事業所へ郵便局員が配達します。本記事では、ポスティングとの決定的な違い、料金の仕組み、そして「チラシ投函禁止」のマンションやオフィスビルを攻略するエリアマーケティングの極意を解説します。
第1章 配達地域指定郵便物(タウンメール)とは?
本章では、日本郵便が提供する「配達地域指定郵便物(タウンメール)」の基本的な仕組みと定義について解説します。顧客リストを持っていなくても、指定した地域の「全戸」または「全事業所」に郵便物を届けることが可能です。宛名が不要という特殊な性質を持ち、エリアマーケティングにおいて独自の強みを発揮するサービスです。
宛名なしで郵便局員が届ける
タウンメールの最大の特徴は「宛名が不要」であることです。「〇〇町にお住まいの皆様」「〇〇地区の従業員の皆様」といった記載だけで送れます。指定した町丁目(〇丁目単位)にあるすべての配達可能な箇所へ、郵便局員が通常の郵便物と同様に配達します。宛名リストを購入する必要がなく、エリアを面でカバーできます。
タウンプラスとの違い
よく似たサービスに「タウンプラス」があります。大きな違いは「配達期間」と「差出局」です。タウンメールは配達まで3日程度と比較的早く、地域の集配郵便局で差し出します。一方、タウンプラスは配達まで1週間〜2週間かかりますが、マンション限定や事業所限定といった細かいセグメント(指定)が可能です。
第2章 ポスティング・新聞折込との決定的な違い
エリアを狙う手法として、民間のポスティングや新聞折込チラシと比較されます。しかし、その到達率と信頼性には大きな開きがあります。ここでは、なぜタウンメールが「届かない場所」に届くのか、その理由を解説します。コスト差を埋めるだけの圧倒的な到達力と、媒体としての「格」の違いを理解しましょう。
「お断り」マンションを突破する信頼性
配布員がポストへ直接投函する「ポスティング」の特徴と比較した際、最大の強みは「郵便局への信頼」です。管理人が常駐するセキュリティの高いマンションや、チラシ投函禁止のオフィスビルでも、郵便局員であれば入館できます。「郵便物」として扱われるため、ゲートキーパーに阻害されず、ターゲットの手元まで確実に届きます。
新聞未購読層へのアプローチ
新聞折込は安価ですが、新聞を購読していない世帯や若年層、オフィスには届きません。タウンメールは郵便受けがある全ての場所が対象です。新聞を取らない単身世帯や、新設されたばかりの法人オフィスまで網羅します。エリア内のカバー率(網羅性)において、タウンメールの右に出る媒体はありません。
| 媒体 | 信頼性 | 到達率(カバー率) | コスト | ターゲット |
|---|---|---|---|---|
| タウンメール | 最高(郵便) | 高(全戸OK) | 高 | 全世帯・全法人 |
| ポスティング | 中 | 中(禁止物件NG) | 中 | 地域住民 |
| 新聞折込 | 高 | 低(購読者のみ) | 低 | シニア・ファミリー |
第3章 タウンメールの3つのメリット
なぜコストをかけてまでタウンメールを選ぶ企業が増えているのでしょうか。そこには「リスト代の削減」「開封率の高さ」「取りこぼしの防止」という3つの明確なメリットがあります。特に新規出店や地域密着型のBtoBサービスにおいて、費用対効果を高めるための強力な武器となる理由を深掘りします。
1. リスト購入費が不要
通常、DMを送るには宛名リストが必要です。リスト購入には1件あたり数円〜数十円のコストがかかります。タウンメールはリスト自体が不要なため、この初期投資をカットできます。特定の地域に集中してアプローチしたい場合、リストを用意して個別に送るよりも、トータルの工数とコストを抑えられるケースがあります。
2. 郵便物としての高い「開封率」
ポストに入っているチラシは即座に捨てられがちです。しかし、タウンメールは「郵便物」として認識されます。DMの成果を左右する重要な指標である「開封率」についての記事でも触れましたが、人は郵便物に対して「重要かもしれない」という心理が働きます。無造作なチラシとは一線を画す、高い視認性が確保されています。
3. 地域の「面」を制圧する
リストを使ったDMは「点」のアプローチです。リストに載っていない新規転入者や新設法人は漏れてしまいます。タウンメールは指定エリアを「面」で塗りつぶすアプローチです。そこにポストがある限り届くため、潜在顧客の取りこぼしがありません。地域密着のインフラ工事や、選挙広報などで多用されるのもこのためです。
第4章 デメリットと注意点
強力な媒体ですが、万能ではありません。導入前に知っておくべきデメリットとして「コストの高さ」と「準備の手間」が挙げられます。また、通常のDMのように細かいターゲット選定ができない点も理解が必要です。失敗を防ぐために、実施前に確認すべき制約事項とリスクについて解説します。
コストはポスティングの数倍
料金については次章で詳述しますが、ポスティング(1枚数円〜)と比較すると、タウンメール(数十円〜)はコストが跳ね上がります。バラマキ型の薄い販促には向きません。高単価な商材や、LTV(顧客生涯価値)が高いサービス、あるいは「絶対に届けなければならない重要なお知らせ」での利用が前提となります。
事前協議と準備期間
思い立ってすぐに送れるわけではありません。差出日の数日前までに、配達を担当する郵便局へ「差出計画書」を提出し、協議する必要があります。配布可能数の確認や、納品スケジュールの調整が必要です。通常のDM発送よりも手続きが煩雑で、リードタイム(準備期間)を長めに確保する必要があります。
第5章 料金体系と発送までのフロー
タウンメールの料金は「基本料金」に「特別料金」を加算する計算式で決まります。サイズや重量によっても変動するため、事前の見積もりが必須です。ここでは具体的なコスト構造と、企画から納品までの実務ステップを整理します。予算オーバーを防ぎ、スムーズに実施するための手順書として活用ください。
料金の計算式と目安
料金は「通常の郵便料金 + 配達地域指定手数料」ではありません。タウンメール専用の料金体系があります。一般的には定形郵便物(25g以内)やハガキの場合、1通あたり数十円〜のコスト感です。大量発送による割引や、重量による加算があるため、必ず郵便局の窓口で見積もりを取得してください。
実施の3ステップ
1つ目は「計画」です。GIS(地図情報システム)などを使い、ターゲットとなる町丁目を決めます。2つ目は「協議」です。担当の郵便局へ行き、配布可能数(世帯数・事業所数)を確認し、申請書を提出します。3つ目は「納品」です。指定された期日までに、区分け(結束)した郵便物を局へ持ち込みます。
第6章 成功事例:BtoC店舗からBtoB営業まで
実際にどのようなシーンで活用されているのか、具体的な事例を紹介します。飲食店のオープン告知などのBtoC利用はもちろん、実はBtoB企業にとっても有効な手段です。工業団地へのアプローチや、特定エリアのオフィスビル攻略など、業種を超えた活用パターンを知ることで、自社の戦略に応用できます。
【BtoB】工業団地・オフィス街への周知
ある運送会社は、物流倉庫が密集する湾岸エリアを指定してタウンメールを実施しました。ターゲットは「物流担当者」です。宛名はなくとも、会社のポストに届けば総務を経由して担当者に回覧されます。リスト作成が難しい「特定の工業団地」や「オフィスビル群」を狙い撃ちすることで、効率的に新規リードを獲得しました。
【BtoC】高単価リフォーム・不動産
地域密着のリフォーム会社は、築年数が経過した住宅街を指定して配布しました。ポスティングでは配布禁止のマンションにも届くため、富裕層へのリーチに成功。信頼性の高い郵便物として届くため、安っぽいチラシと混同されず、高単価な外壁塗装やリノベーションの問い合わせ獲得に繋がりました。
第7章 効果を最大化するエリア戦略とクリエイティブ
タウンメールを成功させる鍵は「エリア選定」と「読ませる工夫」です。無駄な地域に配れば予算の浪費です。また、宛名がない分、自分事化させる仕掛けが不可欠です。ここでは、GISを用いた科学的なエリア抽出方法と、開封率を高めるための具体的なクリエイティブ・テクニックについて解説します。
GIS(地理情報システム)で賢く選ぶ
「店舗から半径〇km」という単純な選び方は危険です。GISデータを活用し、「年収1000万円以上の世帯が多いエリア」「事業所密度が高いエリア」などを抽出します。郵便局によっては、こうしたエリア分析レポートを提供してくれる場合もあります。データを基に配布地域を絞り込み、投資対効果を高めます。
宛名面と圧着ハガキの活用
宛名面には「〇〇町にお住まいの皆様へ」「〇〇エリアの企業様限定」と大きく記載し、ターゲット意識を刺激します。また、掲載情報量を増やすために開封率アップと情報量を2〜3倍に増やせる「圧着ハガキ」の利用を推奨します。コストはかかりますが、限られた紙面で説得力を高めるには最適です。
第8章 まとめ:高信頼のタウンメールと安価な他媒体を使い分ける
タウンメールは「最強の到達率」を誇りますが、コストも高額です。重要なのは使い分けです。広範囲への認知には安価な媒体を使い、ここぞという重要エリアにはタウンメールを投入する。最後に、予算と目的に合わせた最適なメディアミックスの考え方を提示し、貴社の営業活動を加速させる次の手を提案します。
「質」のタウンメール、「量」の他媒体
絶対に届けたい重要エリアや、セキュリティの固いマンション攻略にはタウンメール一択です。一方で、質より量を重視する初期アプローチには、コストが安いポスティングや新聞折込が適しています。さらにコストを下げて広範囲に撒くなら、FAX DMやメール営業が圧倒的に有利です。
まずは安価なテストから
いきなり高コストなタウンメールを大量に送るのはリスクがあります。BtoB企業向けでしたらまずは弊社の最新の法人FAX番号リストを利用したFAX DMや、ターゲットを絞れるメールアドレスリストへの配信でテストを行い、反応が良い地域や業種を見極めてください。その「勝てるエリア」に対して、タウンメールで集中砲火を浴びせるのが必勝パターンです。
よくある質問(FAQ)
タウンメールの実施にあたり、よくある質問をまとめました。
Q. 「マンションのみ」「戸建てのみ」といった指定はできますか?
A. 原則としてできません。タウンメールは指定された町丁目(エリア)にある「すべての配達可能な箇所」へ投函するサービスです。建物の種別でセグメントしたい場合は、姉妹サービスの「タウンプラス」をご検討ください(ただし、タウンプラスは配達まで日数がかかります)。
Q. 準備期間はどれくらい必要ですか?
A. 余裕を持って「2週間前」には動き出すことを推奨します。差出日の数日前までに「差出計画書」を郵便局へ提出し、承認を得る必要があります。また、印刷物の納品形態(結束方法など)にもルールがあるため、事前に担当郵便局と協議する時間が必須です。
Q. チラシをそのまま送ることはできますか?
A. いいえ、そのままでは送れません。「郵便物」としての体裁が必要です。裸のチラシではなく、封筒に入れるか、ハガキの形式にする必要があります。また、宛名面に「〇〇地域にお住まいの皆様へ」といった記載と、「配達地域指定」の表示義務があります。
Q. 最低何通から利用できますか?
A. 特に最低通数の決まりはありませんが、郵便局ごとの配布可能数に合わせて出すのが一般的です。例えば「A町1丁目(500世帯)」を指定する場合、500通を用意します。少なすぎるとエリアマーケティングの効果が薄れるため、ある程度の規模(数千通〜)で実施するケースが多いです。
参考文献・出典元
タウンメールと併せて検討したいサービス・記事
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(2014年に掲載した記事を15年と25年に加筆修正更新したものです)



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