カニバリゼーション(共食い)とは?意味と「良いカニバリ・悪いカニバリ」の違い

戦略的カニバリゼーションのイメージ。自社の旧製品を意図的に陳腐化させ、新製品へエネルギーを集中させることで、市場全体を進化させる攻めの戦略です。
「カニバリゼーション(Cannibalization)」とは、直訳すると「共食い」を意味する言葉です。
ビジネスの現場では、自社の新製品が既存製品のシェアを奪ってしまい、会社全体の利益が増えない(あるいは減る)現象を指します。
一般的に「避けるべき失敗」とされていますが、実はAppleやTeslaのように「意図的にカニバリゼーションを起こして成長する」という高度な戦略も存在します。
この記事では、マーケティングにおけるカニバリゼーションの仕組みと対策、そしてWeb担当者が知っておくべき「SEOのカニバリゼーション」の解消法までを網羅して解説します。
カニバリゼーション(共食い)とは何か
カニバリゼーション(略してカニバリ)とは、「自社の製品やサービス同士が競合し、売上を奪い合う現象」のことです。
どんなに新製品が売れても、その分だけ既存製品の売上が落ちていれば、会社としての成長(総利益の増加)はありません。
なぜ発生するのか?
主な原因は、ライン拡張(類似商品の追加)や、販売チャネルの多角化を行う際に、「ターゲットの重複」を見落としてしまうことにあります。
⚠ 失敗例:飲食店チェーンのドミナント戦略
あるコンビニや飲食店が、特定エリアに店舗を密集させる「ドミナント出店」を行ったとします。
物流効率や認知度は上がりますが、やりすぎると「自社のA店の客を、隣の自社B店が奪う」ことになり、1店舗あたりの売上が激減。結果として共倒れになるケースです。
ビジネスにおける2種類のカニバリゼーション
カニバリゼーションには、製品同士で起こるものと、販売経路で起こるものがあります。
| 種類 | 内容と具体例 |
|---|---|
| 製品カニバリ (Product) |
新製品と旧製品の機能や価格が似すぎていて、顧客が移行する現象。 B2B例:高機能な「通常版ソフト」があるのに、安価な「Lite版」が高機能すぎたため、通常版の解約が相次ぐ。 |
| チャネルカニバリ (Channel) |
販売ルート同士の競合。 B2B例:メーカーが「Web直販」で安売りを開始した結果、長年販売してくれていた「代理店」の売上が減り、関係が悪化する(チャネルコンフリクト)。 |
関連リンク:マルチチャネルとは?チャネルカニバリを防ぐ設計
良いカニバリ(戦略的)と悪いカニバリ(偶発的)
ここが最も重要なポイントです。「カニバリ=絶対悪」ではありません。
市場シェアを守るためには、「他社に奪われるくらいなら、自社で奪ってしまえ」という戦略が必要な場面があります。
戦略的カニバリゼーション(良い共食い)
自ら新技術や新モデルを投入し、意図的に既存製品を陳腐化させる戦略です。
一時的に既存製品の売上は落ちますが、市場全体の支配権を維持し、LTV(顧客生涯価値)を伸ばすことができます。
- Appleの事例:
iPodが売れている最中に、音楽機能付きの「iPhone」を発売。iPodの市場を自ら破壊したが、スマホ市場で覇権を握った。 - Teslaの事例:
高級車(モデルS)に加え、安価な量産車(モデル3)を投入。高級車の売上は一部食われたが、EV市場全体でのシェアは爆発的に拡大した。
偶発的カニバリゼーション(悪い共食い)
戦略なしに類似商品を乱発し、ただ利益率を下げてしまうケースです。
「Lite版を出したらPro版が解約された」「新店舗を出したら既存店の赤字が増えた」というのは、事前のシミュレーション不足による失敗です。
SEOにおけるカニバリゼーション(キーワードの共食い)
Webマーケティングの世界では、意味合いが少し異なります。
「キーワードカニバリゼーション」と呼ばれ、SEOにおいて避けるべき重大な問題です。
SEOカニバリの定義
同じサイト内に、「同じキーワード(テーマ)」を狙った記事が複数存在する状態です。
例えば、「FAXDM メリット」というテーマの記事が2つあると、検索エンジン(Google)はどちらを上位表示すべきか迷ってしまいます。
SEOカニバリが発生するとどうなる?
- お互いに評価を食い合い、両方の記事の順位が下がる。
- 意図しないページ(古い記事など)が検索結果に出てしまう。
- 被リンクの評価が分散してしまう。
SEOカニバリの対策・解消法
- 記事の統合(リライト):
似たような記事が2つあるなら、内容の濃い方に統合し、1つの強力な記事にする。 - 301リダイレクト:
削除する方の記事から、残す方の記事へ転送設定(301リダイレクト)をかけ、評価を引き継ぐ。 - キーワードの住み分け:
記事Aは「FAXDM メリット」、記事Bは「FAXDM 書き方」のように、狙う検索キーワードを明確に分ける。

SEOカニバリゼーションの図解。1つのキーワード(骨)を自社サイト内の複数の記事(犬)が奪い合うと、評価が分散し、検索エンジン(審判)も困ってしまいます。
カニバリゼーションを防ぐための対策まとめ
ビジネス全体のカニバリゼーションを防ぐ(またはコントロールする)には、以下の視点が必要です。
差別化とポジショニングの明確化
ライン拡張を行う際は、「誰のための商品か?」を明確に分けます。
- 松(Pro):高価格・全機能・手厚いサポート → 大企業向け
- 竹(Standard):標準価格・標準機能 → 中小企業向け
- 梅(Lite):低価格・機能制限・セルフサポート → 個人・小規模向け
このように機能やサポート範囲で明確な差をつければ、上位プランからの不要なダウングレード(共食い)を防げます。
総利益(粗利ミックス)で判断する
個別の商品売上が減っても、会社全体の「総利益」が増えていれば問題ありません。
新商品が既存商品を侵食しても、新規顧客の獲得コスト(CAC)が下がっていたり、LTVが伸びているなら、それは「良い投資」と判断できます。
よくある質問(FAQ)
Q. カニバリゼーションは完全に避けるべきですか?
いいえ、完全に避けることだけを考えると、イノベーションが止まります。
「自社製品のカニバリを恐れて新製品を出さない」でいると、いずれ他社の革新的な製品に市場ごと奪われてしまいます。自社を攻撃してでも進化する姿勢が必要です。
Q. SEOのカニバリゼーションはどうやって見つけますか?
Googleサーチコンソールで、特定のクエリ(キーワード)に対して、複数のページが表示・クリックされていないかを確認するのが確実です。
また、実際にGoogle検索でsite:ドメイン名 キーワードと入力し、似た記事がいくつも出てくる場合は注意が必要です。
まとめ
カニバリゼーションは「共食い」という怖い意味を持ちますが、恐れすぎてもいけません。
- マーケティングでは:無計画な共食いは防ぎつつ、市場を進化させるための「戦略的な共食い」は歓迎する。
- SEOでは:キーワードのカニバリは「百害あって一利なし」。統合やリライトで早急に解消する。
この違いを理解し、自社の資産(ブランドやコンテンツ)を最適に配置することが、賢い経営戦略と言えるでしょう。
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- 基礎: 値入率と粗利率(見積もりの計算)
- 攻撃: ROI(投資対効果)の提案法
- 戦略:
スキミング価格(高く売る)
ブランド拡張
カニバリゼーション(共食い) - 防御: 損益分岐点(値引きのリスク計算)
- 管理: キャッシュフロー経営(回収サイト)
- 長期: LTV(顧客生涯価値)の最大化
-
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