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エンゲージメントマッピングとは?顧客心理を「見える化」し、最適なアプローチを導く設計図

    
エンゲージメントマッピングのアイキャッチ画像。顧客の検討フェーズに合わせて、最適なコンテンツや接点を配置・可視化したマーケティング戦略図のイメージ。
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エンゲージメントマッピングとは?顧客心理を「見える化」し、最適なアプロー...

「とりあえず、手持ちのリスト全員に同じメルマガを送っている」「ホワイトペーパーを作ったけれど、どのタイミングで案内すればいいか分からない」。もし貴社のマーケティングがこのような状態なら、せっかくの見込み客を取りこぼしている可能性があります。

顧客は、いきなり商品を購入することはありません。「認知」し、「関心」を持ち、「比較」して、ようやく「決断」します。この心の動きに合わせて、適切なタイミングで適切な情報を届けるための設計図、それが「エンゲージメントマッピング」です。

本記事では、複雑な顧客心理を見える化し、行き当たりばったりの施策から脱却するための「地図」の作り方を解説します。

エンゲージメントマッピングのアイキャッチ画像。顧客の検討フェーズに合わせて、最適なコンテンツや接点を配置・可視化したマーケティング戦略図のイメージ。

顧客心理を『見える化』するエンゲージメントマッピング。いつ・誰に・何を届けるかを設計図に落とし込むことで、ナーチャリングの成果は劇的に変わります。

目次

エンゲージメントマッピングの定義と役割

【本章の要約】
エンゲージメントマッピングとは、顧客の「検討フェーズ(横軸)」と、自社が提供する「コンテンツ・接点(縦軸)」をマトリクス(表)にして整理した戦略図です。よく似た概念に「カスタマージャーニーマップ」がありますが、マッピングはより実務的で、「いつ、誰に、何を送るか」という具体的なアクションを定義するために使用します。

「感情の旅」と「戦術の地図」の違い

マーケティング用語でよく混同されるのが「カスタマージャーニーマップ」との違いです。両者は目的が異なります。

  • カスタマージャーニーマップ:
    顧客がどのような課題を持ち、どう感情が動いていくかという「ストーリー(感情の旅)」を描いたもの。概念的な理解に使います。
  • エンゲージメントマップ:
    その感情の変化に合わせて、具体的にどのメールを送り、どの資料を見せるかという「タクティクス(戦術の地図)」を落とし込んだもの。実務の指示書として使います。

なぜ「地図」が必要なのか(属人化からの脱却)

優秀な営業マンは、無意識に頭の中でこのマッピングを行っています。「このお客さんはまだ情報収集中だから、事例集だけ渡しておこう」「この人は本気だから、見積もりを持って行こう」といった判断です。

しかし、Webマーケティングやインサイドセールスでこれをやるには、誰でも同じ判断ができる「共通の地図」が必要です。地図がなければ、まだ興味が薄い人にいきなり「見積もり」を送って嫌われたり、逆に買う気満々の人を放置してしまったりする「事故」が起きてしまいます。

マッピングを行う3つのメリット

【本章の要約】
マップを作成することで、顧客の「温度感」が直感的に分かるようになります。また、営業部門とマーケティング部門の間で「どの状態になったら営業に引き渡すか」という共通認識が生まれ、連携ミスが激減します。さらに、自社に足りていないコンテンツ(コンテンツの穴)が明確になるため、制作業務の優先順位も決まります。

1. 顧客の「今の温度感」が直感的にわかる

マップ上に顧客を当てはめることで、「A社はまだ『認知』段階だから、無理な売り込みはやめよう」「B社は『比較』段階で止まっているから、他社との比較表を送ろう」といった、個別の戦略が立てやすくなります。

2. 営業とマーケティングの「連携ミス」がなくなる

よくあるトラブルが、マーケティング部門が「リードを獲得しました!」と営業に渡したものの、営業から「まだ全然買う気がない客ばかり送ってくるな」と怒られるケースです。

エンゲージメントマップがあれば、「比較フェーズのコンテンツ(例:料金シミュレーション)を見た人だけを営業に渡す」という明確なルール(引き渡し条件)を決めることができます。これにより、無駄な営業工数を削減し、成約率を高めることができます。

3. コンテンツ制作の「優先順位」が決まる

マップを作ってみると、意外な発見があります。「初期段階の集客用記事はたくさんあるが、検討段階のお客さんに見せる資料が一つもない」といった「コンテンツの穴」です。

やみくもにブログを書くのではなく、「今はここが空欄だから、この穴を埋める事例集を作ろう」というように、戦略的に制作リソースを配分できるようになります。

あわせて読みたい:
マッピングを行う前提として、まずはターゲットとなる顧客リストが一元管理されている必要があります。
👉 ハウスリストとは?営業資産を最大化する「自社リスト」の作り方

実践!エンゲージメントマップの作り方4ステップ

【本章の要約】
マップ作成は、縦軸と横軸を定義することから始まります。横軸に「顧客の検討フェーズ」、縦軸に「接点(チャネル)」を置き、その交差点にコンテンツを配置していきます。最後に、顧客の反応を数値化する「スコアリング」のルールを決めることで、マップは単なる図から「自動化のためのプログラム仕様書」へと進化します。

Step1. ペルソナと購買プロセスの定義(横軸)

まず、ターゲット顧客(ペルソナ)が、商品を認知してから契約に至るまでの心理的な段階を定義します。これをマップの「横軸」にします。BtoBでは一般的に以下の4段階で設定します。

  • 認知(Awareness):課題に気づく、情報収集を始める。
  • 関心(Interest):解決策を探す、メルマガ登録などを行う。
  • 比較・検討(Desire):具体的な製品比較を行う、他社と比べる。
  • 意思決定(Action):稟議にかける、契約する。

Step2. 接点とコンテンツの洗い出し(縦軸)

次に、自社が持っている、あるいはこれから作る予定のアプローチ手段を洗い出します。これを「縦軸」にします。

  • Webサイト(ブログ、製品ページ)
  • メール(メルマガ、ステップメール)
  • イベント(展示会、ウェビナー)
  • 営業(インサイドセールス、フィールドセールス)

Step3. 心理変容を促す「キラーコンテンツ」の配置

作成したマトリクスの空欄に、コンテンツを当てはめていきます。ここで重要なのは、「次のフェーズに進ませるためのコンテンツ(キラーコンテンツ)」を用意することです。

例えば、「関心」フェーズの人を「比較」フェーズに進ませるには、漠然としたブログ記事ではなく、「失敗しない選び方ガイド」や「他社比較表」といった、背中を押す資料が必要です。

Step4. スコアリング(判定基準)の設定

最後に、各コンテンツに対する反応を点数化します。「ブログ閲覧=1点」「資料請求=10点」「料金表クリック=20点」といった具合です。
この合計点が一定を超えたら「有望な見込み客(ホットリード)」と判定し、営業担当へ通知を飛ばす仕組みを作ります。

あわせて読みたい:
スコアリングによって抽出された「有望なリード」を、さらに厳密に見極める基準(BANT条件など)については、こちらで解説しています。
👉 リードクオリフィケーションとは?営業効率を最大化する「見込み客の選別」手法

フェーズ別・効果的なコンテンツの配置例

【本章の要約】
「どの段階で何を送ればいいか」という悩みに対する具体的な処方箋です。初期段階はハードルの低い「お役立ち情報」、検討が進んだら「製品の強み」、最終段階では「ROI(費用対効果)」と、顧客がその時々に求めている情報を提供することが成約への近道です。

1. 認知・関心期(まだまだ客)

まだ自社の名前も知らない、あるいは課題が潜在的な状態です。いきなり製品を売り込むと引かれてしまいます。

【推奨コンテンツ】

  • お役立ちブログ:「業界の最新トレンド」「〇〇業務の効率化テクニック」など。
  • ホワイトペーパー(入門編):「〇〇の基礎知識」「用語集」など。

2. 比較・検討期(そのうち客)

課題解決の必要性を感じ、いくつかのツールや業者を比較している段階です。「なぜ自社を選ぶべきか」を論理的に伝えます。

【推奨コンテンツ】

  • 導入事例インタビュー:「同業他社がどのような成果を出したか」は最強の説得材料です。
  • セミナー・ウェビナー動画:実際の画面デモや、専門家の解説で信頼を獲得します。
  • 比較表・選び方ガイド:競合他社との違いを明確にし、選定基準を提示します。

3. 意思決定期(今すぐ客)

導入はほぼ決めており、あとは「予算」や「社内説得」が壁になっている段階です。稟議を通すための支援材料を提供します。

【推奨コンテンツ】

  • 料金表・シミュレーション:具体的なコスト感を提示します。
  • 個別相談会・デモ体験:営業担当が直接疑問に答えます。
  • ROI試算表:「投資に対してこれだけの回収が見込める」という、上司説得用の資料を提供します。

作成したマップを運用に乗せるポイント

【本章の要約】
マップは作って終わりではありません。むしろ、運用してからが本番です。作成したマップは、MA(マーケティングオートメーション)ツールに設定して自動化することで真価を発揮します。また、一度決めたルールが正しいとは限りません。定期的に数字(開封率やクリック率)を見て、マップ自体を修正し続けることが成功の鍵です。

MAツール(マーケティングオートメーション)での自動化

エンゲージメントマップは、そのままMAツールの「シナリオ設計書」になります。

「料金ページの閲覧(行動)があったら、3日後に事例集のメール(コンテンツ)を送る」といったマップ上のルールを、ツールに設定(実装)していきます。手動で一人ひとりの行動を追うのは不可能ですので、マップ運用にはツールの力が不可欠です。

定期的な見直しとアップデート

最初に作ったマップはあくまで「仮説」です。「比較フェーズの人にこのメールを送ったけど、全く開封されない」といったことが必ず起きます。

半年に1回程度はマップを見直し、「このコンテンツは響かないから差し替えよう」「新しいフェーズを追加しよう」といったメンテナンスを行いましょう。現場の営業マンの声を取り入れるのも効果的です。

まとめ:マップがあれば、アプローチに迷わない

エンゲージメントマッピングは、見えない顧客の心理を可視化し、組織全体で共有するための強力な武器です。

「いつ、誰に、何を送るか」が明確になっていれば、マーケティング担当者は迷うことなくコンテンツ制作に集中でき、営業担当者は温まったリードだけに集中してアプローチできます。この好循環を作ることが、リードナーチャリングのゴールです。

次のステップ:温まった顧客を選別する

マップに沿って育成を行い、スコアが高まった見込み客(ホットリード)が出てきたら、次はいよいよ営業に渡すための最終選別です。
失敗しない引き渡しの基準については、以下の記事で解説しています。

あわせて読みたい:
👉 リードクオリフィケーションとは?営業効率を最大化する「見込み客の選別」手法

エンゲージメントマッピングに関するよくある質問

Q. MAツールがないとマッピングは意味がありませんか?

A. いいえ、意味はあります。ツールがなくても「この段階のお客様には、この資料を見せよう」という戦略が整理されるだけで、営業活動の質は上がります。ただし、メール配信の出し分けなどを効率的に行うには、やはりツールの導入が推奨されます。

Q. コンテンツ(記事や資料)が全然足りない場合はどうすれば?

A. 無理に全てのマスを埋める必要はありません。まずは「比較・検討期」のコンテンツ(事例集や料金表)など、売上に直結しやすい部分から優先的に作成してください。認知期のブログなどは後回しでも構いません。

Q. カスタマージャーニーマップと両方作る必要がありますか?

A. リソースに余裕がなければ、実務に直結する「エンゲージメントマップ」だけでも十分です。より深く顧客心理を分析し、サービス改善などを行いたい場合はカスタマージャーニーマップを作成すると良いでしょう。

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参考文献・出典

(2014年に掲載した記事を15年25年に加筆修正更新したものです)

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