プライスリーダー(pricereader)とは、ある業界の商品市場で価格支配力を持ち合わせている企業、価格先導者を指します。
とりわけ寡占市場の中では、プライスリーダーは市場全体の価格設定に大きな影響を与えるため、フェアな市場価格の形成を阻害する要因となりえ、独占禁止法の対象となるケースも見られます。

海外のお札
Pixabay画像:どこかの海外のお札紙幣

プライスリーダーの優位性

プライスリーダーは通常、その市場におけるシェアだけでなく、競合他社よりも多くの販売チャネルや強力な生産体制を持っています。

仮にライバル企業が自社利益の拡大をもくろみ、プライスリーダーの設定する価格よりも安価な商品を販売したとします。
こうしたケースでも、一時的にプライスリーダーからシェア獲得に成功したとしても、すぐにそのシェアはプライスリーダーに奪い返されることになるでしょう。

というのも多くの場合、プライスリーダーは他社の追随を許さないほどの生産能力を有しているため、商品の値下げ販売は容易であるからです。
仮に値下げ合戦が始まったとしても、最後に生き残るのは生産力の勝るプライスリーダー企業であることは、火を見るよりも明らかです。

そのためプライスリーダーは、他社の状況を見ながら商品価格の設定をコントロールすることで、獲得利益の安定化、利益の再投資による顧客開発と維持、結果としてさらなる売上拡大を実現し、市場優位性を保つことで業界内の地位をより強固なものとすることができます。

プライスリーダーが消費者に与える影響

プライスリーダーが市場に与える影響は、競合他社だけにとどまりません。
プライスリーダーが商品価格を値上げした場合は、競合他社もそれに追随し値上げするケースが多くなり、末端となる消費者にそのしわ寄せがいきます。

競合他社がプライスリーダーの値上げに追随する理由は、一時的な売上拡大よりも、価格競争の発生によって被るダメージの回避を優先させるからです。
競合他社がプライスリーダーに合わせた価格設定を行うことで、市場の全体の価格相場が上がり、結果的に消費者がこれまでよりも高い価格で商品購入をしなければならない状況が生まれます。

また商品自体の品質が下がり、それが消費者にマイナスの影響を与えるケースもあります。
寡占市場下で価格競争が安定し、どの会社も安定的な利益を上げられる状況が続いた場合、利益拡大を商品自体の品質を落とすことで実現させる企業が出てきます。

こうした動きに追随する企業もあれば、そのまま維持し続ける企業もありまちまちですが、品質を落とした商品を販売する企業の愛用者は、以前よりも質の低い商品を購入することになるでしょう。
一部の消費者は、商品に対する不満足を抱え、他社商品への乗り換えも辞さない状況となるかもしれません。
プライスリーダー

独占禁止法とプライスリーダー

これまで述べてきましたが、プライスリーダーが存在することで、商品価格の上昇と商品の品質低下が起きる可能性が高くなります。
そうした事態を避けるために公正取引委員会と「独占禁止法」によって、企業を監視する仕組みが日本にはあります。

独占禁止法、正式には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で市場においてふるまうことができるようにすることで、市場メカニズムを正しく機能させ、消費者がニーズに合った商品選択を実現するために定められています。
私的独占、カルテル、不公正な取引方法を行うなど、独占禁止法に違反した場合、違反行為の排除措置命令や違反事業者に対して課徴金が課されるなど、罰則が科せられます。

(このページは2005年に掲載した記事を2015年と2021年に加筆修正更新したものです)