ベネフィット (Benefit) とは「利益」や「便益」を意味する言葉です。
マーケティングにおけるベネフィットは、消費者に対して商品やサービスの利点や効果を提示し、購買意欲を向上させるための概念です。

ベネフィットは、商品やサービスそのものから得られる効果や強み=メリットではなく、これらが与える「プラスの影響」を指しています。
商品やサービスに付随するベネフィットは、潜在的なニーズを持つ顧客の深層心理を刺激し、購買意欲を高める効果を発揮するケースがあります。

つまりベネフィットを強調することで、消費者が購買後に得られる具体的な効果をイメージしやすくして、購買に至るまでのハードルを下げることも可能です。

ベネフィット設定でwinwinなメッセージ
Pixabay画像:ベネフィット設定でwinwinのメッセージ

アーカーのベネフィット3分類

アメリカの経営学者、デイヴィッド・アーカーによると、ベネフィットは、ファンクショナルベネフィット、エモーショナルベネフィット、セルフエクスプレッシングベネフィットの3種類に分類できるといいます。

以下の3つを区別して、それぞれのターゲットに適合したベネフィットを強調することが、マーケティングを進めていく上で必要になってきます。

ファンクショナル(機能的ベネフィット)

商材の機能的な特徴により享受できる便利さ、効率といった利益です。子どもでも軽くて扱いやすい、ほかの商品に比べて安い・おいしい、注文してから届くのが早いといった要素を指します。

エモーショナル(情緒的ベネフィット)

商品を手に取ったりサービスを利用することで得られる精神的な満足です。
高級ホテルに宿泊することで得られる幸福感や関心感、人が持っていない商品を所有する優越感などを指します。

セルフエクスプレッシング(自己実現的ベネフィット)

商品やサービスの利用で得られる自己実現もベネフィットの一つです。
商品を持つことで誰かに自慢できる、高額サービスを利用する自分に自信が持てる、自分らしさを表現するために商品を手にするなどが該当します。

メリットとベネフィットの違い

商材のメリットとベネフィットを混同したり、メリットだけをアピールしたりするのはマーケティング上好ましくありません。

繰り返しになりますが、メリットとは「商品そのもの特徴や強み」
ベネフィットはそのメリットから得られる体験や変化、満足感など「消費者が得られる利益」の事。

競合する商品が世の中にたくさんある中で、商材の売り手はそのメリットだけをアピールしても埋没してしまうのは自明の理です。
ベネフィットを上手に見出し、見込み客へアピールすることが求められてきます。商材のメリットだけでなく、ベネフィットを正しく把握していかなければ、十分な成果を得ることはできません。

設定方法

ベネフィットの設定は商材の販売戦略に大きな影響を及ぼすため、十分に練り上げる必要があります。
ベネフィットを設定するにはまず商材のターゲットを設定し、その悩みや欲求を洗い出さなければなりません。
最終的に商材を利用することで、どんな結果や効果があるのか、どんなポジティブな未来が待っているかを想定していきます。

次にターゲットが共感できるようなストーリーを作ります。
悩みや問題を抱えるターゲットが、それをいかにして解決できるか、あるいは解決が必要であると気づいてもらうための動機付けを行うのに必要となります。

そして最後に、ターゲットが悩みや問題を解決できるベネフィットを提示します。得られるベネフィットに関しては、機能的、情緒的、自己実現的ベネフィットの3類型を意識しながら、なるべく複数網羅できる構成にしたほうが、より多様なターゲットにアプローチすることができます。

顧客満足

ベネフィットは商品の購入を行った消費者が、その利用過程で得る満足だけではなく、将来的な顧客満足の醸成と強く関連します。
そのためマーケティング戦略をより緻密に構築するには、消費者の共感性を得られるようなベネフィットを提示し、利用していく必要があるといえるでしょう。

(この記事は2014年に掲載した記事を2015年と2022年に加筆修正更新したものです)