フォード効果とはイギリスの経済学者、P.フォードが唱えた小売業に関する仮説です。

生活水準が向上するにつれて生活必需品を販売する小売店が減少し、酒などのし好品や趣味などの商品を販売するお店が増えるというもので、1901年から1931年までの30年間、イギリスの主要都市における小売店数の推移から導き出された仮説です。

フォードによれば、店舗の密度は国民の収入が増え、生活水準が高くなればなるほど大きくなり、小売店舗の生産性が大きくなるほど店舗密度は小さくなるという法則性が存在するといいます。
人々の消費が増加し、小売店のお客さんが増えれば増えるほど、小売店の多くはその店舗面積の拡大を進めます。

そうして店舗が大きくなれば店舗あたりの生産性は上がり、店舗単位での生産性が増えます。反対に店舗を大きくできずお客さんを増やすことができない店舗は、生活必需品を販売する小売店同士の競争に負け、やがて淘汰されるのです。

商品陳列された小売店舗
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結果としてその地域では小さい店舗が廃業するか、ほかの生活必需品でないものを売るお店に変わることで生活必需品を扱う店舗の割合が減り、その店舗密度が減少します。
当然のことですが、たとえ人々の生活が豊かになり可処分所得が増えたとしても生活必需品の購入量が増えるわけではありません。

消費生活水準が一定レベルのところまで上昇した後は、消費の多様化や個性化を進展させます。
結果として、貴金属やバッグ、そのほかの高級品や酒類、たばこといったし好品、趣味などの商品など必需品以外の需要が大きくなり、そうした商品を取り扱う店舗が増加していく傾向は、いたるところで見られるようになるのです。

ただ、生活必需品を販売する店舗密度の減少は、すべてフォード効果だけでは説明できない部分もあるとされています。
それは「生活水準が上がっても生活必需品以外を売る店舗がずっと増え続けない」ためです。

これは日本でも見られます。確かに生活水準が上がるにつれて、食品を販売する小売店は大型スーパーに押され、いまではあまり見られなくなりました。
その代わり、し好品を扱う店舗が増えつづけているかといえばそうではなく、むしろそうした店舗も時代の流れや景気の波にさらわれる形で減り続けています。

商業統計などの統計データからも証明されています。
平成11年商業統計速報(卸売・小売業) 概況
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syougyo/result-2/h11/index-s.html

ネットショップが一般化した近年では、フォード効果とは異なる地平で小売店数が変化しているように、小売店をめぐる状況は20世紀前半の小売店とは異なる様相を呈しているといっても過言ではありません。

(このページは2014年に掲載した記事を2015年と2021年8月に加筆修正更新したものです)