かつては営業といえば、相手先に訪問して商談を行うのがオーソドックスなやり方でしたが、近年ではWebの発達により、見込み顧客であるリードに対して非対面で営業をおこなう「インサイドセールス」が普及しています。

インサイドセールスを取り入れれば、少ないリソースで効率的に営業活動が可能になるなどのメリットがあります。この記事ではインサイドセールスの基本や始め方、メリットなどを解説していきます。

インサイドセールスイメージ画像
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インサイドセールスの特徴

まずは、インサイドセールスの基本的な特徴や、従来型の営業との違いについて解説します。

インサイドセールスは非対面型の営業活動

インサイドセールスは、獲得した見込み(リード)顧客について、直接相手先に訪問することなく進める営業のことを指します。

Webマーケティングやセミナーなどを通じて獲得したリードに対して、メールマガジン、Webを通じた資料提供、電話、Web電話などを通じて、オフィスにいながら営業活動をおこなうものです。

一般的な対面型営業と組み合わせながらおこなうケースもありますが、現代では非対面でのやりとりだけで商品購入やサービス利用・企業の売り上げ獲得まで至るビジネスも少なくありません。

従来型の対面営業との違い

インサイドセールスが非対面型の営業活動であるのに対して、対面型の従来型の営業活動はフィールドセールスと呼ばれます。

対面型営業では主要顧客を中心にそれぞれ担当が明確になる傾向にあります。対面する場合は特定の担当者が初期の情報提供から売上の獲得、関係深耕まで一貫して対応するのがスムーズだったためです。

その結果、フィールドセールス主体の営業活動では、顧客数にある程度比例して営業担当者が多く必要になる傾向にあります。対してインサイドセールスは、工夫次第で多くの顧客に同時対応が可能なため、小さい組織で全国多数の顧客に対応することも可能です。

インサイドセールスのメリット

インサイドセールスのメリットは大きく分けて次の3点です。

  • 少人数で多くの顧客をカバーできる
  • 移動時間が削減され、営業効率化と品質向上、労働時間の削減が可能
  • コスト抑制にもつながる

例えばメールマガジンやWebの資料などを活用した営業は、一度に多くの顧客に発信可能。また、ZOOMや電話など会話を伴うコミュニケーションも移動や資料印刷などの準備が必要ない分、フィールドセールスより少人数で多くの顧客にリーチ可能です。

また、移動時間の削減は、営業効率を高めるとともに「外出先なので対応できない」といったことが発生しなくなるため、営業品質の改善にもつながります。移動時間を削減した部分で他のタスクをこなしてしまえば、労働時間の削減にもつながります。

これにより人件費が抑制されるのはもちろん、交通費などの経費も削減できます。インサイドセールスに欠かせないパソコンやメール、ZOOMなどのツールは、対面型の営業を行うオフィスでも導入されているケースが多いため、インサイドセールスをおこなうからといって発生するコストは限定的です。そのため、人件費や経費の削減効果の方が大きい企業が多いでしょう。

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インサイドセールスが注目される背景

インサイドセールスを取り入れる企業が増えてきているのは次のような背景があるためです。

  • そもそも商談の移動時間を無駄と感じる営業員が多かった
  • Webツールの発達
  • コロナの感染拡大による対面型コミュニケーションの制限

実は、従来より対面型商談における移動時間に無駄を感じる人は多いということが、マーケティングソフトウエア企業の「Hubpost」の調査により明らかになっています。同社の調査では営業活動における移動により、日本全体で年間4兆円もの無駄が生じているとの試算もでています。

引用コンテンツ
引用元:「Hubpost」日本の営業に関する意識・実態調査結果をHubSpotが発表

そのうえ、WebマーケティングツールやZoomなどの電話会議システム、SNS・メールなど非対面でのコミュニケーションを補助するツールが普及したことで、非対面でも充分な営業活動が可能な環境が整いつつあることも背景にあります。

さらに、2020年のコロナ感染拡大により、対面でのコミュニケーションに制限がかかるなか、上記の非対面営業に必要なツールを整備する企業が増えました。その結果、従来から課題意識があった対面の営業活動の無駄の解決にもつながったため、インサイドセールスは急速に普及してきているのです。

インサイドセールスを始めるための準備

インサイドセールスを実践するうえで必要なツールや、始め方について簡単に紹介していきます。

インサイドセールスに必要なツール

インサイドセールスに必要なツールは次のようなものがあります。まず、こちらはインサイドセールスをおこなわない企業でも現代ではビジネスに必要ですが、Web環境やテレビ電話システムになります。

  • インターネット
  • 電話
  • Web電話システム(ZOOM、Webexなど)

最低限のセールス活動は以上のツールを工夫して運用していけば可能ですが、さらにインサイドセールスを高度化させるうえでは次のような専門的なツールもあるとよいでしょう。

MAツール
リードの獲得や見込み顧客の育成、商品購入への誘導などマーケティング活動を自動化し、サポートしてくれるツールです。

SFA
営業活動を可視化したり、顧客分析をしてくれたりするツール。対面営業でも活用できますが、顧客に関する情報の精度を高めることで、特にインサイドセールスの効率化に役立ちます。

Web商談ツール
通常のWeb電話の機能に加えて、ファイル共有機能・レポート機能・顧客データの管理機能を持った、非対面営業に特化したツールもリリースされています。よりスムーズなプレゼンが可能になったり、営業効果を高めたりするのに役立つでしょう。

インサイドセールスの始め方

従来型の営業をインサイドセールスに変えるときは次のようなプロセスで検討していきます。

営業プロセスの設計
まずは、既存の営業プロセスを見直して、インサイドセールスを取り入れる部分、フィールドセールスを残す部分を明確化。さらにインサイドセールスを行う営業プロセスや領域を決定します。

インサイドセールス担当部署の設定
多くの場合はインサイドセールスに対応する部署を切り出した方がスムーズです、例えば次のような機能を持つチームを整備する必要があります。

  • マーケティングチーム
  • インサイドセールス専門部署
  • 営業統括部署(インサイドセールスとフィールドセールスを統括)

部署のデザインが決まったら、リソース確保も必要になるので、あわせて準備しましょう。

今後の目標やKPIの作成
インサイドセールスによって目指す目標やKPIを明確にします。営業活動ですので、顧客増や売上向上などが一般的ですが、営業にかかる負荷や労働量の削減なども目標として考えられます。

効果測定と改善策の検討
あとは実際にインサイドセールスを行いながらPDCAを回転させて、営業手法を継続的に改善させることで、企業に合ったインサイドセールスの手法を構築していきます。

MAツールを活かしたインサイドセールスの成功事例

ある認証サービス用のシステムを販売する企業ではもともとMAツールを使用していたのですが、営業活動との連携が不充分で、あまり有効活用できていない状態でした。

そこで、MAツールによる分析内容をもとにインサイドセールスを加速させることに。具体的には次のようなアクションを取りました。

  • 見込みの高い顧客をリストアップして、重点的にインサイドセールスを実施
  • インサイドセールスを通じて得た情報から顧客の行動を分析
  • MAツールの情報をもとに過去の営業活動をふまえて成功率の高い顧客領域を特定し、重点的にアプローチ

インサイドセールスに軸足を置いたことで、訪問活動がなくなり、営業員の負担が軽減するとともに、MAツールの情報や分析内容がうまく営業活動に活かされ、成約率が大幅に向上。特に優秀だった領域ではリーチした先のうち、案件化した割合である案件化率が10%から60%まで改善したのです。

インサイドセールスで営業効率と品質を改善しよう

インサイドセールスを導入すれば、営業員の負担となりがちな移動の手間が省け、時間を有効活用できるようになります。営業がオフィスに不在で対応できないなどの事態も避けられるため、営業の品質向上にもつながります。

一般的な電話やWebツールのほか、MAツール、SFA、Web商談ツールなど、インサイドセールスをスムーズに進めるためのツールも多数普及しています。これらを有効活用しながら、自社にあった効率的なインサイドセールスのあり方をデザインしましょう。