レピュテーションリスクとは?悪化原因やリスク対策事例紹介
企業においては、信用やブランド価値を保護することが、健全な経営を継続するうえで重要です。信用やブランドを毀損するリスクをレピュテーションリスク (英語表記:reputation risk) といいますが、各社レピュテーションを守るためにさまざまな対策をおこなっています。
この記事ではレピュテーションの意味やリスク、事例や各社の対策などを紹介します。レピュテーション維持に課題を感じている人は、ぜひ参考にしてください。
レピュテーションの意味
レピュテーション(Reputaiton)とは日本語で「評判」という意味です。現代では特に企業に対する評判、という文脈でしばしば使用されます。
評判は企業にとってポジティブなものにも、ネガティブなものになります。例えば新商品が市場で好評となることで、知名度や購入検討者が増え、売上増につながることがあります。また、企業のブランドメッセージが評判となり、ブランディングに役立つこともあるでしょう。
逆に不祥事やビジネス上の粗相が知れ渡って商品購入を控える動きが広まったり、取引の継続を断られたりと、企業にマイナスの影響をもたらすこともあります。
レピュテーションリスクとは?
好悪双方の影響が想定されるレピュテーションですが、特にレピュテーションの悪化が企業にダメージを与えるリスクのことをレピュテーションリスクといいます。
近年は、情報が従来より早いスピードで拡散するようになったため、悪い評判はより多くの人々に伝播し、企業に大きなダメージを与えるリスクが高い時代に。そのため各社がリスクの対策に力を入れるようになってきています。
レピュテーションが企業に与えるダメージ
レピュテーションの悪化は企業に次のようなダメージを与えます。
- 商品売上の低下
- 顧客の減少や新規顧客獲得の阻害
- ブランド再構築のコスト
不良品や異物混入、製造工程の不備など、商品に紐づく不祥事によるレピュテーションの悪化は、商品の買い控え、店舗での販売自粛などに繋がり、大きな売上減少につながる要因となります。
また、レピュテーションの悪化を受けて、取引を取りやめる顧客が出る場合も。さらに影響が出やすいのが新規顧客の獲得です。今までの実績がないにもかかわらず、評判の悪い先とわざわざ新しい取引をしようとする企業はなかなか見つからないでしょう。
そして、悪化したレピュテーションを回復させるためには、新たにブランドメッセージを再構築して、広告などを通じて情報発信が必要です。マーケティング関連の追加コストが発生します。
信用リスクは以前より高まっている
情報技術の発達により、世の中にあらゆる情報が急速に拡散する時代となっています。1990年代後半から発達したインターネット、2000年代に普及したスマートフォン、そして2010年代に広まったSNSなどが、より多くの情報をより早く伝達する役割を果たしています。
一方で、企業にとってネガティブな情報がより早く、より多くの人に広がってしまう世の中に。そこで多くの企業は、悪い評判が広がらないよう、そして広がった時には適切に対処してダメージを軽減できるように、レピュテーションリスクに対する対策を進めています。
ウィキペディアのReputational_damage:https://en.wikipedia.org/wiki/Reputational_damage
レピュテーションリスクの対策
レピュテーションが経営にダメージを与えるリスクを軽減するために、各社がレピュテーション対策を進めています。ここからはレピュテーションリスクの原因と対策をみてみましょう。
レピュテーション悪化原因と事例
企業のレピュテーションは、次のような要因によって発生します。
- 商品・サービス品質の低下
- 不祥事
- 風評被害
- 内部告発
それぞれ事例も交えながら、詳しくみていきましょう。
商品・サービス品質の低下
商品・サービスの質の悪化は、口コミやSNSによる情報発信などを通じて、すぐに市場に広まり、売上やブランディングに影響を与えます。また産地偽装や経営陣の犯罪などの不祥事はマスコミに報じられ世間にすぐに広まるでしょう。
このレピュテーション悪化の厄介なところは、明確な不祥事ではないため、企業もレピュテーションの低下を認識しづらいことです。商品・サービスの質が競合他社に劣後していることが広まり、企業の競争力が徐々に削がれていきます。
不祥事
不祥事がマスコミに報道され、一気にレピュテーションが悪化する事例は多数あります。企業に明白な責任があり、またマスコミは大々的に報道することから、とりわけダメージが大きくなりがちな要因です。
最近はアルバイトが不適切な行為を拡散した結果、問題となる「バイトテロ」の事案が増加しています。例えば、宅配ピザチェーン「ピザーラ」ではアルバイトスタッフが厨房内の冷蔵庫やシンクの中に入っている画像をネット上に投稿して炎上。ピザーラ自体のレピュテーション悪化につながり、また当該のフランチャイズ店は廃業に追い込まれました。
風評被害
本来企業の責任ではないのですが、風評被害でダメージを受けるケースも少なくありません。近年ではコロナウイルスの感染拡大後に、ウイルスとは全く無関係のメキシコ「コロナビール」の売り上げが悪化するといった被害がありました。
また、日本においては東日本大震災後の原子力発電所事故による風評被害が問題視されています。実際には放射性物質の検査をクリアしていて、全く問題のない食品であるにもかかわらず、買い控えなどの弊害が根強く残っています。
内部告発
企業関係者が公的機関に企業の問題を伝達して周知を図る内部告発もリスク要因に。企業内部の人間による情報ということで、ネガティブな情報が真実であると信用されやすく、その分企業の評判を大きく毀損するリスクがあります。
少し前の事例にはなりますが、2000年には三菱自動車のリコール隠しが問題視され、同社のレピュテーションを大きく毀損しましたが、こちらは当時の運輸省に対する内部告発が契機となって明るみに出た事案です。
レピュテーションリスク軽減対策
原因をふまえると、次のような取り組みがレピュテーションリスクの軽減に繋がります。
- 品質・サービス改善の継続的な取り組み
- コンプライアンス意識の徹底と内部監査体制の強化
- 情報発信体制や社員の教育徹底
- 社内の風通しの改善
- レピュテーション事案発生時の対応プロセスを整備
まず自社が販売する商品・サービスの質を高めておくことが、レピュテーション維持に有効であることはいうまでもありません。
また、研修や賞罰制度などを整備しコンプライアンス遵守を社員に徹底させることや、内部管理体制を強化し、法令に則った業務運営を継続することが、不祥事発生の予防になります。
そのほか、企業の公式情報の発信内容や発信方法についてマニュアルやチェック体制を強化することで、不用意に意図しないメッセージが世間に伝わる事態を避けられます。社員のSNSやブログ発信についてガイドラインを設け、センシティブな情報を発信させない対策も有効です。
内部告発を避けるためには、社員の意見が適切に社内に共有される仕組み作りが重要。企業が指摘された問題点と真摯に向き合い、改善に乗り出す機運があれば、告発される前に社内で問題点が共有され、レピュテーションが悪化する前に内部で解決を図ることが可能です。社内で問題提起した社員の身分が保全される仕組みづくりも怠ってはいけません。
また、どれだけ対策しても悪い情報が拡散するリスクを完全にゼロにすることは困難。レピュテーションを脅かす事案が発生したときには、スピード感を持って対応することが大切です。事案発生時の対応方法や経営へのエスカレーション方法などをあらかじめ整備し、万が一の時に素早く対応できるようにしておきましょう。
リスクの重要性
情報伝達が高速化した昨今においては、ネガティブな情報の伝達によるレピュテーションの悪化が、企業に致命的なダメージを与えるリスクが高まっています。
過去の大きなレピュテーション悪化事例も参考に、レピュテーション悪化を引き起こす要因と対策について理解し、事案が起こる前に必要な対応を進めておきましょう。
(この記事は2022年に掲載した記事を2023年に加筆修正更新したものですp)
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