BtoBで反応が取れる「キャッチコピー」の作り方と型|FAX・Web・メール共通の鉄則
BtoBマーケティングにおいて、FAX DM、メール、Webサイト(LP)のすべてに共通する「0.5秒の壁」をご存知でしょうか?
忙しい決裁者や担当者は、手元に届いた情報を「読むか、捨てるか」をわずか0.5秒で判断しています。どんなに素晴らしいサービスや商品であっても、最初の一行(キャッチコピー)で選ばれなければ、中身が読まれることはなく、存在しないのと同じになってしまいます。
この記事では、単なるメールの例文集とは視点を変え、FAX・Web・メールなどあらゆる媒体で応用できる「刺さる言葉の選び方」と「心理テクニック」について、プロが使うフレームワークを元に解説します。
※Googleの研究(2012年)では、ユーザーはWebサイト等の第一印象をわずか「0.05秒(50ミリ秒)」で判断するという結果が出ています。

媒体別・キャッチコピーの役割と「0.5秒」の戦い方
人間の心理トリガー(何に反応するか)は共通ですが、媒体によって「見え方」や「勝負が決まるポイント」は異なります。まずは各媒体の特性を理解しましょう。
FAX DM:視覚的インパクトと「Zの法則」
封筒を開封する手間がないFAX DMは、紙面全体が一瞬で視界に入ります。
人の視線は「左上→右上→左下→右下」とZ字に動くため、紙面の上部(ヘッダー)に配置するキャッチコピーが勝負の9割を握ります。
メールとは異なり、文字の「太さ(フォントウェイト)」や「大きさ」による視覚的なインパクトで、直感的に「重要だ」と思わせる工夫が必要です。
Webサイト(LP):ファーストビューでの直帰率
検索広告などから訪れたユーザーは、「自分の求めている答えがここにあるか」を瞬時に判断します。
ここで「ようこそ、弊社は〜」といった挨拶文を載せてはいけません。
ファーストビュー(スクロールせずに見える範囲)に、顧客が得られる「結論(ベネフィット)」をドンと配置し、離脱(直帰)を防ぐ役割が求められます。
メール:受信トレイでの「15文字」の競争
メールの場合、勝負は「開封される前(受信トレイの一覧画面)」で決まります。
スマホでの閲覧が増えている現在、件名の最初の15文字程度で「自分に関係がある」と思わせなければ、ゴミ箱行きかスルーされてしまいます。
このように媒体ごとの戦い方は違いますが、根底にある「相手に行動させるための言葉の選び方」には、共通の「型」が存在します。
人間の心理を突くコピーライティング「3つの型」
センスや感覚だけでコピーを考えてはいけません。反応が取れるコピーには、すでに検証された心理学的な「型(フレームワーク)」があります。
代表的な3つの型をご紹介します。
GDTの法則(感情を動かすフレームワーク)
人は「理屈」ではなく「感情」で動きます。その感情を刺激する要素を3段階に分けたのがGDTの法則です。
| 要素 | 内容 | BtoBでの活用イメージ |
|---|---|---|
| Goal (目標) |
時間・お金・労力を節約したい | 「コスト削減」「業務効率化」「残業ゼロ」 ※理性的欲求 |
| Desire (欲望) |
富・名誉・愛が欲しい、快適になりたい | 「売上No.1」「競合に勝つ」「丸投げで解決」 ※本能的欲求 |
| Teaser (本性) |
好奇心、反社会性(常識の否定) | 「まだテレアポをしているのですか?」「〇〇してはいけない」 ※最も強い行動喚起 |
4Uの原則(強力な見出しの要素)
世界的な起業家マイケル・マスターソンが提唱した、強力な見出し(ヘッドライン)に不可欠な4つの要素です。
- ① Useful(有益性):
読み手にメリットがあるか。「役立つ情報だ」と思わせる。 - ② Urgent(緊急性):
今すぐ見る理由があるか。「期間・数量限定」「法改正の期限」など。 - ③ Unique(独自性):
他とは違うか。「ここだけの」「業界初」などの差別化。 - ④ Ultra-Specific(超具体性):
数字などで具体的か。「大幅に」より「15%」の方が強い。
QUESTの法則(構成の型)
キャッチコピーで惹きつけた後、本文を読ませて行動させるまでの流れを作る型です。
- Qualify(絞り込み):「〇〇でお悩みの社長様へ」(ターゲット指定)
- Understand(共感):「その課題、わかります」(悩みの理解)
- Educate(教育):「実は新しい解決策があります」(解決策の提示)
- Stimulate(興奮):「これを導入すればこう変わります」(ベネフィットの想像)
- Transition(変化):「今すぐ資料を見てください」(行動要請)

反応率を高めるコピーライティングの2大フレームワーク(GDTの法則・4Uの原則)
脱・感覚!反応率を変える「具体的な言葉」への変換術
フレームワークを理解した上で、実際に書いたコピーを「推敲」する際のテクニックを解説します。
少し言葉を変えるだけで、信頼性と反応率は劇的に変わります。
「形容詞」を「数字」に変える
BtoBの決裁者は、感情だけでなく「論理(ロジック)」や「証拠(エビデンス)」を求めます。
曖昧な形容詞を、世界共通言語である「数字」に置き換えましょう。
× 悪い例:「経費を大幅に削減できます」
〇 良い例:「経費を年間120万円削減できます」× 悪い例:「多くの企業に導入されています」
〇 良い例:「上場企業300社以上に導入されています」
「ターゲット」を「指名」する(カクテルパーティー効果)
騒がしいパーティー会場でも、自分の名前が呼ばれると聞こえる心理現象を「カクテルパーティー効果」と呼びます。
これを応用し、マス(大衆)に向けた言葉ではなく、「あなたのことだ」と認識させる呼びかけを行います。
× 悪い例:「経営者の皆様へ」
〇 良い例:「従業員30名以下の建設業社長様へ」
このように具体的に指名するためには、事前の「リスト戦略(セグメンテーション)」が不可欠です。誰に送るかが決まって初めて、刺さるコピーが決まるからです。
コピーライティングは、点(文章単体)ではなく、線(マーケティング全体の流れ)で考えることで最大の効果を発揮します。
BtoBで絶対にやってはいけない「失敗コピー」の特徴
どんなにテクニックを駆使しても、以下の「3つのNG」を犯してしまうと、BtoBの決裁者からは信頼されず、そっとゴミ箱に入れられてしまいます。
無意識にやってしまっていないか、チェックしてみてください。
主語が「売り手(We)」になっている
「弊社は画期的な新商品を開発しました」「私たちは創業50年の実績があります」
これらはすべて、売り手(We)が主語の言葉です。
厳しい現実ですが、顧客はあなたの会社には興味がありません。顧客が興味あるのは「自分(自社)の利益」だけです。
主語を「買い手(You)」に変換しましょう。
× We主語:「弊社は高性能な会計ソフトを開発しました」
〇 You主語:「(御社は)経理業務の時間を半分に減らせます」
専門用語(ジャーゴン)の乱用
「このソリューションはAPI連携によりSaaSのサイロ化を解消し…」
技術者同士なら通じますが、決裁権を持つ社長や役員が必ずしもその分野の専門家とは限りません。
意味がわからない言葉が出てきた瞬間、人は思考を停止し、読むのをやめます。
「中学生でもわかる言葉」に噛み砕くことこそが、プロのコピーライティングです。
「煽り(あおり)」と「嘘」
「100%儲かる」「誰でも簡単に」「今すぐ買わないと損します」
BtoC(個人向け)の情報商材などでは見かける手法ですが、BtoBで過度な煽りは命取りです。
企業取引において最も重視されるのは「信用」です。根拠のない煽り文句は、「怪しい会社」「コンプライアンス意識が低い」と判断され、その後の取引機会を永遠に失うリスクがあります。
BtoBのコピーは、感情を動かしつつも、常に「誠実」でなければなりません。
まとめ:センスではなく「理論」で書く
キャッチコピーに、生まれ持った文才やセンスは必要ありません。
今回ご紹介した「GDTの法則」や「4Uの原則」といった型(フレームワーク)に当てはめ、泥臭く言葉を磨き上げる作業こそが正解への近道です。
まずは、明日送るメールの件名や、FAX DMのヘッダーを、今回のアドバイスを元に見直してみてください。
たった1行の変更が、驚くような反応率の違いを生むことを実感できるはずです。
刺さるコピーを送る「相手」は決まっていますか?
最高のコピーも、ターゲットが間違っていれば効果はゼロです。
400業種以上のデータベースから、あなたの言葉が響く相手を見つけましょう。
BtoBキャッチコピーに関するよくある質問
Q. BtoBとBtoCでキャッチコピーの作り方は違いますか?
はい、違います。BtoC(個人)は「衝動・感情」で購入することが多いですが、BtoB(法人)は「論理・信頼・稟議」で購入が決まります。そのため、BtoBでは奇抜な表現よりも、「具体的メリット(数字)」や「信頼性」を伝える言葉が好まれます。
Q. メールの件名はどのくらいの長さが良いですか?
スマホのメール一覧画面で見切れない「15文字〜20文字」以内に、最も重要なキーワード(メリットやターゲット名)を入れるのが鉄則です。長い件名にする場合でも、重要な言葉は必ず左側(最初の方)に配置しましょう。
Q. 良いコピーが思いつかない時はどうすればいいですか?
ゼロから考えず、記事内で紹介した「GDTの法則」や「4Uの原則」といったフレームワーク(型)を使ってみてください。また、競合他社のメールやLPを見て、良いと思った表現をストック(スワイプファイル)しておくのも有効です。
本記事の執筆にあたり参照した文献
- ロバート・W・ブライ『セールスライティング・ハンドブック』
- マイケル・マスターソン『大富豪の仕事術(4Uの原則)』
- 神田昌典『禁断のセールスコピーライティング』
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