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「みんな使っている」が最強の殺し文句?バンドワゴン効果を営業・マーケティングで活用する3つの鉄則

  
バンドワゴン効果のイメージ画像。多くの人々が行列を作っている先を、一人の人物が気になって見ている様子。
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「みんな使っている」が最強の殺し文句?バンドワゴン効果を営業・マーケティ...

あなたは初めて訪れた街でランチのお店を探しています。

  • A店:行列ができていて、店内も賑わっているラーメン屋
  • B店:客が一人もおらず、店主が暇そうにしているラーメン屋

味も値段も分からない状態で、どちらのお店に入りますか?おそらく、9割以上の人が「A店(行列の店)」を選ぶはずです。

「これだけ並んでいるのだから、美味しいに違いない(失敗はしないだろう)」このように、人は判断に迷ったとき、「他人の行動」を正解だと思い込む心理があります。これを心理学で「バンドワゴン効果」と呼びます。

営業やマーケティングの世界では、この「勝ち馬に乗る心理」を利用できるかどうかが、成約率を大きく左右します。特に日本人は「横並び意識」が強いため、機能や品質を説明するよりも、「みんな使っていますよ」という一言の方が背中を押すケースが多々あるのです。

本記事では、バンドワゴン効果のメカニズムと、実績や人気を演出して「選ばないリスク」を感じさせる実践的なテクニックを解説します。

バンドワゴン効果のイメージ画像。多くの人々が行列を作っている先を、一人の人物が気になって見ている様子。

📢 営業心理学シリーズ
本記事は集団心理・クロージング編です。営業心理学の全体像や基礎知識は「営業心理学とテクニックまとめ」をご覧ください。

バンドワゴン効果とは?(勝ち馬に乗る心理)

【本章の要約】
「多勢=正義・安心」と感じる心理現象です。語源はパレードの先頭楽隊車。対義語である「スノッブ効果(みんなと一緒は嫌)」や「アンダードッグ効果(判官贔屓)」との違いも解説します。

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の正体

バンドワゴン効果(Bandwagon Effect)とは、「ある選択肢を支持する人が多ければ多いほど、その選択肢がより魅力的に感じられる現象」のことです。かつてパレードの先頭を行く楽隊車(バンドワゴン)の後ろに、人々がぞろぞろとついて行った様子から名付けられました。

この心理の根底には、マズローの欲求5段階説における以下の2つが関わっています。

  • 安全の欲求:「みんなが選んでいるなら安全だ(失敗したくない)」
  • 社会的欲求:「流行に乗り遅れたくない(仲間外れになりたくない)」

逆の心理を知っておく(スノッブ・アンダードッグ)

常に「みんなと同じ」が正解とは限りません。状況によって使い分けるために、対義語も覚えておきましょう。

名称 心理状態 有効なシーン
バンドワゴン効果 「みんなと同じがいい」
流行、安心感、信頼
大衆向け商品、ヒット商品
初めて利用するサービス
スノッブ効果 「みんなと同じは嫌」
差別化、希少性、限定
高級ブランド、限定品
マニア向け商品
アンダードッグ効果 「負けてる方を応援したい」
同情、判官贔屓(ほうがんびいき)
選挙戦での劣勢アピール
「廃業寸前です、助けて」セール

バンドワゴン効果(追随)、スノッブ効果(差別化)、アンダードッグ効果(判官贔屓)の3つの心理効果をイラストで比較した図解。

【実践編】「人気」を演出する3つの数字テクニック

【本章の要約】
具体的にどう表現すればバンドワゴン効果が発動するか。「人気があります」という曖昧な言葉ではなく、具体的な「数字」と「権威」を使って信頼を勝ち取る方法を解説します。

① シェア・実績のアピール(No.1効果)

最も王道かつ強力な手法です。「1位である」という事実は、それだけで品質の証明になります。

  • 王道コピー:
    「業界シェアNo.1」「楽天ランキング1位獲得」「累計販売数100万個突破」
  • ポイント:
    総合1位が取れなくても、「カテゴリ別」「地域別」「満足度」など、切り口を変えてNo.1になれる分野を探しましょう。
    ※ただし、根拠のないNo.1表記は景品表示法違反になるため、必ず調査データ等の出典が必要です。

② 具体的で身近な数字(ひとごと感を消す)

「100万個」と言われてもピンとこない場合は、より身近な単位に変換します。

  • 普通の表現:
    「多くのお客様に選ばれています」
  • バンドワゴン的表現:
    「3人に1人が選んでいます」
    「リピート率92.5%!一度使うと手放せません」
    「福岡市の美容室の40%が導入済みです」

③ 予約・在庫状況の可視化(行列を見せる)

Webサイトやチラシ上で、擬似的に「行列」を作ります。

  • 「只今の待ち人数:15人」
  • 「予約殺到につき、発送まで2週間お待ちいただいております」
  • 「在庫残りわずか(他の方がカートに入れています)」

「今買わないとなくなる」という焦燥感と、「これだけ売れているなら良いものだ」という安心感を同時に与えることができます。

【BtoB営業版】「乗り遅れますよ」で決裁を通す

【本章の要約】
企業は「利益」よりも「失敗」を恐れます。特に日本企業には「他社事例」が最強の武器になります。競合他社の動きを見せることで、現状維持バイアスを打破します。

企業担当者は「失敗」が怖い

BtoB営業において、新しいツールの導入を提案した時、担当者が一番恐れているのは何でしょうか?それは「導入して失敗し、社内で責任を問われること」です。

誰も導入していない画期的な新商品は、「実験台にされる」という恐怖を与えます。逆に、「すでにみんな使っている(枯れた技術である)」と伝えることが、最大の安心材料になります。

「他社事例」が最強のクロージング

バンドワゴン効果を最大化するBtoB営業トークは、「競合他社・同業他社の動き」を伝えることです。

【FOMO(取り残される恐怖)を刺激するトーク】

「実は先月から、御社と同業のA社様、B社様もこのシステムに切り替えておりまして、すでに生産性を20%向上させています。
このままですと、コスト競争力で御社が不利になってしまう懸念がございますが…」

このように伝えると、相手の心理は「新しいものを買うかどうか」から、「ライバルに置いていかれるリスクをどう回避するか」にシフトします。Webサイトに「導入実績企業のロゴ一覧(ロゴウォール)」を掲載するのも、この効果を狙ったものです。

💡 あわせて読みたい
なぜ企業は「失敗」を恐れるのか?その深層心理にある「安全の欲求」については、以下の記事で詳しく解説しています。
👉 マズローの欲求5段階説を営業・マーケティングに活かす方法

【注意点】逆効果になるケース(スノッブ効果との使い分け)

【本章の要約】
全員が「みんなと同じ」を求めているわけではありません。富裕層やこだわり派の顧客に対して「みんな持ってます」と言うのは禁句です。逆の心理である「スノッブ効果」を理解し、相手によって使い分ける必要があります。

「みんなと一緒」が嫌な人たち

バンドワゴン効果は強力ですが、万能ではありません。
例えば、高級ブランドのバッグを買おうとしている時に、店員から「これ、街中の主婦みんな持ってますよ!」と言われたらどうでしょうか?多くの人は「じゃあやめておこう」と感じるかもしれません。

このように、「他人とは違うものが欲しい」「限定品を手に入れたい」という心理を「スノッブ効果」と呼びます。

ターゲットによる使い分けマップ

目の前の顧客、あるいは自社の商品がどちらのタイプなのかを見極めて、訴求ポイントを変えましょう。

ターゲット層 有効な心理効果 刺さるキラーワード
一般層・初心者
(失敗したくない心理)
バンドワゴン効果
(安心感・信頼)
  • 「売上No.1」
  • 「迷ったらコレ」
  • 「定番のロングセラー」
富裕層・マニア
(差別化したい心理)
スノッブ効果
(希少性・特別感)
  • 「1日限定5食」
  • 「会員様だけの」
  • 「知る人ぞ知る」

嘘はバレる!「ステルスマーケティング」の危険性

【本章の要約】
バンドワゴン効果を狙うあまり、架空の実績やサクラ(やらせレビュー)を使うのは絶対NGです。現代の消費者は「作られた人気」に敏感であり、一度の嘘で信頼は地に落ちます。

「作られた行列」のリスク

「人気があるように見せたい」という焦りから、以下のような行為をするのは危険です。

  • 根拠のない「No.1」表記(景品表示法違反)
  • 社員や関係者による「やらせ口コミ」(ステルスマーケティング規制違反)
  • SNSのフォロワー購入

現代の消費者は、SNSや口コミサイトを通じて「本物の人気」か「演出」かを鋭く見抜きます。
一度でも「サクラを使っている」とバレれば、その悪評(デジタルタトゥー)はネット上に残り続け、バンドワゴン効果どころか、ブランドの死活問題になります。

実績ゼロからのスタート方法

もし実績がまだない(新商品など)場合は、嘘をつくのではなく、以下の方法で正直に信頼を集めましょう。

  1. モニターキャンペーンを行う: 無料や割引で体験してもらい、正直な感想(口コミ)を集める。
  2. 「過程」を見せる: 開発秘話や苦労話を公開し、「応援したい(アンダードッグ効果)」ファンを作る。
  3. 権威を借りる: 専門家の推薦や、メディア掲載実績を作る。

まとめ:顧客の「決断の勇気」を後押しする

顧客はいつだって、最後の決断に迷っています。
「本当にこれでいいのかな?」「損しないかな?」

そんな時、背中を押してあげられるのがバンドワゴン効果です。
「ご安心ください。みんなもこれを選んで、満足されていますよ」

この一言が、顧客にとっては何よりの「保証書」になります。
嘘偽りのない実績と数字を積み上げ、自信を持って「人気商品です」と言える状態を作ること。それが最強の営業戦略です。

💡 あわせて読みたい
顧客が「損をしたくない」と感じる心理は、営業において非常に重要です。この心理を解明した「プロスペクト理論(損失回避の法則)」については、以下の記事で解説します。
👉 【損失回避】プロスペクト理論を営業に応用する!メリットより「損」を強調せよ


よくある質問(FAQ)

バンドワゴン効果の活用について、営業やマーケティング現場からよくある質問にお答えします。

Q. まだ実績がない新商品の場合はどうすればいいですか?

A. 実績がない段階では、バンドワゴン効果(数)は使えません。その代わり、「モニター利用者の声」や「開発者の想い」を伝えて信頼を得るか、「限定100名様」のようにスノッブ効果(希少性)で攻めるのが有効です。

Q. BtoB営業で社名を出せない事例が多いのですが?

A. 具体的な社名が出せなくても、「東証プライム上場の製造業様」「福岡市内のクリニック様」のように、業種や規模感を具体的に伝えることで、相手に「自分に近い会社も使っている」とイメージさせることは可能です。

Q. バンドワゴン効果とスノッブ効果を同時に使うことはできますか?

A. はい、可能です。「累計10万本売れている大人気商品ですが(バンドワゴン)、今回の限定カラーは100個のみの生産です(スノッブ)」といった伝え方です。安心感と特別感を同時に刺激する高度なテクニックです。

参考文献・出典データ

  • 経済学・心理学用語:
    ハーヴェイ・ライベンシュタイン “Bandwagon, Snob, and Veblen Effects in the Theory of Consumers’ Demand” (1950)
    ※バンドワゴン効果、スノッブ効果、ヴェブレン効果を提唱した古典的論文。
  • マーケティング規制:
    消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(ステルスマーケティング告示)」

※本記事は2025年12月23日時点の情報に基づき作成されています。

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