1930年代にアメリカで生まれた魔法の弾丸理論とは、広告業界やマーケティング業界で今でもよく知られた言葉で、短期間に一気に商品を売り上げるための手法です。この理論には、広告の投下先という観点から皮下注射モデル(ひかちゅうしゃモデル)と呼ばれるものがあります。

初期マス・コミュニケーションの代表論として、大量の画一的な情報で大衆が操作される様子が、皮下注射の即効性に似ているため名づけられました。この記事では、この注射モデルの意味と事例について見ていきましょう。

皮下注射接種画像
Pixabay画像:皮下注射接種画像

魔法の弾丸理論

魔法の弾丸理論は、本来、広告用語として生まれました。この理論では、1つの広告キャンペーンが、ある商品やサービスを販売する際に必要な買い手全員に効果があると考えられていました。

これは数え切れないほどの買い手がいる業界であれば、広告キャンペーンを行うために負担が大きくなることを意味していました。
しかし、1930年代に入り、皮下注射モデルが登場しました。このモデルは、魔法の弾丸理論にとって、より実用的な手法でした。

弾丸理論の事例

有名な話がアメリカのラジオ番組、宇宙戦争の火星人襲来です。

1938年のある晩、全米のラジオリスナーに大混乱が起きました。CBSの番組「マーキュリー劇場」で放送された『宇宙戦争』というラジオドラマで、火星人が襲来するという設定で、緊急事態モードで放送されたため、聴衆には本物のニュースだと勘違いした人々が多数発生します。

真に迫るオーソン・ウェルズの朗読により、事実と間違え全米がパニックになったと伝えられています。この奇妙な事件の裏には、魔法の弾丸と言われるラジオマーケティングの原理が隠れているのです。現在ではパニックになった人々は一部であり、全米ではないといわれています。

ただ、同じ情報を一度に多くの人々が得ることに免疫のなかった時代のため、その反応は注目を集めました。大衆は情報から影響を受けやすく、動かされやすいという考えから成り立つのが皮下注射モデルです。マス・メディア媒体の使い方次第で動かされると考えられた時代に、ラジオが起こしたパニックは弾丸理論の例として有名になりました。

宇宙戦争ラジオhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E5%AE%99%E6%88%A6%E4%BA%89_(%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA)

現在のマス・メディア

最近では、マス・メディアの影響力を大衆は受けないとの研究結果もでています。免疫のなかった頃に比べ、マス・メディアによる社会全体の操作は難しくなったのです。

ただ、ターゲットを個人や興味を持つグループに絞れば、効果は得られます。
新聞やテレビ、ラジオだけでなく、街中では多くの電光掲示板やポスターが情報を発信しています。魅力的な情報として捉える人々と情報が一致した時、メディアの発した情報は影響を及ぼすのです。

現代では、スマホやパソコンが情報伝達手段として活躍しています。マス・メディアだけが情報の送り手ではない時代となったのです。人々に影響を与える情報を発信できるのはマス・メディアの特権ではなくなりました。マス・メディア自身の社会における役割や影響力について考え直す時期ともいえます。

メディア効果研究の対象としてスマホやパソコンは重要な存在です。様々な機能を備えたスマホは、時に個人の情報処理能力を超えてしまいます。適切な情報処理ができない状態に陥れば、悪い影響を社会に及ぼす可能性も出てくるのです。個人の与える情報を有効に伝えられるかどうかはマス・メディアの取り扱いにかかっているともいえます。

より良い社会のためにも、現代に適したメディアの研究は大切です。メディアに免疫がなかった頃の皮下注射モデルとは異なる情報伝達を探す研究が、現在も続けられています。

皮下注射モデル

皮下注射モデルは、魔法の弾丸理論をより具体的な手法に落とし込んだものです。このモデルでは買い手全員にアプローチするのではなく、注目すべき特定のグループに注目することが重要とされています。

そして、そのグループに最も効果的なメッセージを送り込むことが魔法の弾丸理論を実現する秘訣とされています。

実施方法

皮下注射モデルが具体的にどのように実現されるかというと、まず買い手を特定することが必要です。そのためには性別、年齢、趣味、興味関心など、買い手を分析すること、現代のペルソナ。

そして、分析したデータを元に、特定のグループに向けたメッセージを作り上げます。そのメッセージには、商品やサービスの特徴が上手に盛り込まれており、グループ内での需要を引き出すことができるようになっています。

成功事例

1930年代にアメリカで販売されたクイック・オートモビルズという自動車会社は、このモデルを採用しました。この自動車会社の買い手層は、若い男性でした。彼らに向けた広告メッセージには、「新鮮な感覚」「自由なスタイル」「スピード感」など、彼らが求めるものが上手く盛り込まれていました。結果、同社は大きな成功を収めることができました。

また、デジタルマーケティングにおいて、Google広告やFacebook広告などのターゲティング広告は、皮下注射モデルの概念に基づいています。

まとめ

以上、魔法の弾丸理論と皮下注射モデルの紹介でしたが、いかがでしたでしょうか。魔法の弾丸理論は、効果的に使うことができれば、多くの消費者を引き付けることができます。

しかしながら、短期的に中毒的に反応する消費者にしか効果がなく、ブランドの価値や信頼を失う可能性があるという問題もあります。企業のマーケティング戦略の一部として、魔法の弾丸理論と皮下注射モデルを取り入れることも重要ですが、現代的な視点で広告を検討し、独創的なアイディアを使うことが求められています。

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(このページは2014年に掲載した記事を2021年と2023年に加筆修正更新したものです)